日本のフル3DCGアニメはなぜ酷評されるのか 現在の課題と今後の行方を占う
これからの日本の3DCG作品は
かつてディズニーが2Dから3DCGアニメーションに舵を切ったようなドラスティックな変化は起こりにくいだろう。トップダウンでアーティストに鉛筆からペンタブに変更させられるなら話は別だが、大手であればあるほど、移行は「お願いベース」になってしまう。
この記事を執筆するにあたり演出家のソエジマヤスフミ氏に話を伺ったが、彼は「15年くらいには日本も海外のスタジオと肩を並べられるような3DCG作品が作られるのでは」という。というのも、変化は着実に起こっているというのだ。
昨今は学生の頃から「ブレンダー」という3Dのオープンソースソフトウェアを使いこなしてきた若者が増えてきているそうだ。また、映像制作現場でも作画のアニメーターが「ブレンダー」を使いレイアウトやポージングをとったりしているという。3DCGソフトに慣れ親しんだ人たちが増えれば、CGと作画の親和性も高まっていく可能性は高い。ここ数年で変化がみられなかったとしても、「種はまかれ、着々と目を伸ばし始めていると思う」とソエジマ氏は言う。
そして、その上で3DCG畑出身の監督が増えればより面白い3DCG作品ができていくのではないかとソエジマ氏は期待を寄せる。今はもともとセルアニメや実写をとってきた監督がCGを学んで3DCGの作品を撮っているケースが多いが、CGを専門に作ってきた人が3DCGの監督をすれば、また違った変化も生まれるのかもしれない。
日本の3DCG映画は発展を楽しむ時
筆者は日本のフル3DCG映画は、まだまだ海外のものに技術的に追いついていないと感じている。だがそれが悪いわけではない。
2000年代は海外の3DCG作品の技術進歩が目覚ましく、特に2006年公開のペンギンたちにタップダンスを踊らせたフルCGアニメーション『ハッピー フィート』くらいから『トイ・ストーリー4』までは新作公開のたびに表現幅の広がりに胸を踊らせたものだ。しかし、海外アニメの技術はすでに成熟し切った感があり、新たな技術が開発されても素人目には気づくことすら難しい。ダイナミックなカメラワークも、水や雪の表現も目新しさはなく、ストーリーが重視されるようになった。
一方、日本の3DCGアニメーションは伸びしろが多く、技術の発展を楽しむことができる。しかも、日本の場合は、海外のそれを踏襲しているのではなく、古くから愛されてきた2D技術をうまく加味しつつ独自路線を歩もうとしていて新たな発見と驚きに溢れている。
確かに今は酷評されがちだが、15年もすれば完全に過去のものになる可能性は多分にあるだろう。