『ライオン・キング』フル3DCGの世界を拡張する4DXの技術 「命の輪」を体感できる演出に
8月9日公開初日に映画『ライオン・キング』を4DXで鑑賞してきた。
本作は単なるCGではなく、動物や草木の実写を基に作り上げられたという“超実写”作品。その4DX上映を先月池袋にオープンしたばかりのグランドシネマサンシャインにて堪能するという贅沢な体験だったが、予想のはるか先をいく仕掛けの数々にすっかり虜になってしまった。感想を一言で表すなら「映画を楽しみながらもアトラクションを体験した気分」。
「命の輪」を五感で感じる
まず、目の前に緑豊かなジャングルが見渡す限り広がる冒頭シーンからその映像美に惹き込まれる。草原の引きでのカメラワークは圧巻だ。また躍動感あふれる野生の動物の動きがリアルに再現されていて、毛並みだけでなく骨や筋肉の動き、質感までもが映像を超えてありありと伝わってくる。動物が群れをなして草原を駆け巡るシーンなどでは、動物の足音がそれぞれのテンポで振動となってシート越しに背中で感じられて、「生命力」そのものに間近に触れることができ、そこに“CGっぽさ”は皆無である。
そして動物や虫の視線通りにシートが動くため、動物と同じ視界、目線の高さでジャングルを見渡すことができ、そこで起こっていることや彼らが遭遇したことを“同時に追体験”できる面白みがある。前後左右、上下と自然に動くモーションシートの成せる業だ(ちなみにグランドシネマサンシャインでは最新型のモーションシートが導入されているらしい)。
さらに生命力を宿しているのが動物だけでなく、彼らと共存しているジャングル、草原においても同じである点が本作の秀逸なところ。映像とリンクして森林の香りが立ち込めるなど「におい」のギミックも取り入れられていて、手つかずの自然や本作の一つのテーマでもある「食物連鎖」に思いを馳せる効果がある。上映中に放たれるこの香りにはしっかりリラクゼーション効果もあるらしい。
一方の終盤の敵対するスカーとシンバのバトルシーンは、終始振動が伝わってきて、音だけでは伝わらない動物たちの強弱やダメージが肌感でわかり、息を飲むシーンとなっていた。
こんな仕掛けが至るところに散りばめられているため、瞬く間にして観客もジャングルの傍観者というより、この作品内の一員、一要素として取り込まれてしまう。
ジャングルの王で主人公シンバの父ムファサが言う「命の輪」。その肉食動物、草食動物、そして広大な自然の営みを五感で感じることができるのだ。
「すべての生き物は釣り合って生きてる」という「命の輪」の話に続いての、ムファサの「自然は誰のものでもない。手に入れることばかり考えるな。真の王は与えることを考える」という言葉には、上映中ずっと野生の世界を覗かせてもらっていた人間への何か強いメッセージにも感じられた。