松坂桃李は若手から慕われる“御上先生”そのもの デビューから追うライターがみた成長

1月19日からTBS日曜劇場にて放送がスタートし、3月23日に最終回を迎えた『御上先生』。松坂桃李が演じる文科省官僚の御上孝が私立高校3年の教師となり、生徒に自主的に考えることを促しながら、1つ1つ問題と向き合い、教育改革に挑んできた。毎回、これまでの学園ドラマでは観たこともないような衝撃の展開と、感動のドラマが繰り広げられ、最終回はさまざまな伏線を回収しながら、御上と副担任の是枝(吉岡里帆)、御上の文科省の同期の槙野(岡田将生)、そして生徒たちによって改革の扉が開き、心が震えるラストが描かれた。
本作の脚本を務めた詩森ろばは、松坂の主演映画『新聞記者』(2019年)も担当している。この映画同様に、視聴者に伝えるべき社会的なメッセージが込められた『御上先生』を、詩森と共に地上波で届けられたことは、松坂にとって大きな実績になったと言えるだろう。本作での松坂の演技は各方面で絶賛されていて、たとえば第1話と最終話では、御上の雰囲気にも、生徒との接し方にも、かなり違いが感じられる。松坂による目の光の使い方、ちょっとした体の動かし方、声の出し方など、高度な演技の技術の賜物なのではないだろうか。

とは言っても、それは細かく注意すれば気づくことであって、実際にドラマを観ているときには、完全に『御上先生』の世界観に呑まれ、夢中になっていた。松坂が演じているということよりも、あくまで御上先生という人物に引き込まれ、心を奪われていた。それだけ松坂が御上になり切り、自然に演じていたからなのだろう。御上は生徒を指導し、守ろうとする立場ではあるが、つらい過去や心の内を生徒に打ち明けたことで、生徒と気持ちをひとつにし、生徒の側からも御上を守りたいという気持ちが生まれた。彼が担任を受け持った3年2組は、御上と生徒、是枝が一緒に成長を遂げたのだ。

2009年に『侍戦隊シンケンジャー』(テレビ朝日系)で俳優デビューした松坂は、NHK連続テレビ小説には『梅ちゃん先生』(2012年度前期)と『わろてんか』(2017年度後期)、NHK大河ドラマには『軍師官兵衛』(2014年)と『いだてん~東京オリムピック噺~』(2019年)と、それぞれ2作ずつ出演。さらに、2027年の大河ドラマ『逆賊の幕臣』の主演にも決定している。TBS日曜劇場には『御上先生』のほか、『この世界の片隅に』(2018年)と『VIVANT』(2023年)に出演。朝ドラ、大河、日曜劇場の複数の作品に出演を果たすという快挙を成し遂げてきた。
映画では、日本アカデミー賞にて『ツナグ』(2012年)『麒麟の翼~劇場版・新参者~』(2012年)『今日、恋をはじめます』(2012年)で新人俳優賞、『孤狼の血』(2018年)で最優秀助演男優賞、『新聞記者』(2019年)で最優秀主演男優賞を受賞。名実ともにトップ俳優の1人となった。2025年も、主演時代劇『雪の花 -ともに在りて-』が1月に公開され、寺尾聡とW主演の『父と僕の終わらない歌』が5月に、『フロントライン』が6月に公開予定となっており、出演作が目白押しだが、どの作品でも違う表情を見せ、観客を魅了すること必至だ。