もふもふ猫にダイエットは必要? 『おまわりさんと招き猫』最新6巻はかつてないスケールで展開される壮大なエピソードも

もふもふ猫にダイエットは必要?

 下町情緒あふれる海辺のかつぶし町を舞台に、人の言葉を喋る猫のおもちさんと警察官の小槇悠介が、町で起こるさまざまな不思議を解決する。植原翠による大人気あやかしファンタジー「おまわりさんと招き猫」シリーズ(ことのは文庫)の最新刊が発売となった。第6弾の『おまわりさんと招き猫 月夜にはねる白ウサギ』は、心あたたまるハートフルストーリーから、かつてないスケールで展開される壮大なエピソードまで、不思議と隣り合わせの町で繰り広げられる優しい日々の輝きが詰まった一冊だ。

 かつぶし町の交番に長年住みついているおもちさんは、一人称が「吾輩」で語尾に「にゃ」をつけて喋る、不思議な猫である。数百年前からこの地に根を下ろしているおもちさんは、町の人たちにマスコット的に愛されてきた。そんなおもちさんだが、検診で体重が大台を突破してしまい、「因幡アニマルクリニック」の院長からダイエットを言い渡されてしまう。大好きな鰹節ミックスビスケットも、おさかなサラミもしばらくは食べられない。食いしん坊なおもちさんは意気消沈し、小槇も心を鬼にしておやつを減らし、ダイエットフード生活を続けようと決意するのだが……。

 シリーズの大きな魅力であるおもちさんと小槇の愉快な掛け合いは本巻でも健在で、とりわけおやつをめぐる二人の攻防は笑いを誘う。おもちさんにおやつをあげると運が良くなるという言い伝えがあるため、これまで町の人々はおもちさんに自由におやつを与えてきた。しかし、ダイエット必須の今はそうはいかない。なんとかしてダイエットを先延ばしにしたいおもちさんと、健康のために痩せさせたいのについつい甘くなっておやつを許してしまうおまわりさんの姿に思わず顔が綻んだ。町全体を巻き込んだダイエット計画と、文句を言いつつもダイエットフードを食べて減量を頑張るおもちさんの姿に心が癒されるだろう。

 作中に登場する多種多様なあやかしの姿も、「おまわりさんと招き猫」シリーズの見どころの一つだ。サブタイトルが「月夜にはねる白ウサギ」とあるように、第6巻では「因幡アニマルクリニック」院長が飼っているペットのウサギ「タマさん」が大きな役割を果たす。大人しい白ウサギにとってかつぶし町、そしてこの世界は一体どのように見えているのか。タマさんにフォーカスしたエピソード「星のさざめきと白ウサギ」は、これまでの『おまわりさんと招き猫』にはない非日常感を打ち出した、印象深い一編である。他にも、閉店後の靴屋で響く不審な音や、人ならざるモノたちの領土争いなど、愛らしくも少し厄介なあやかしたちが起こす事件の数々に、思わずページをめくる手が止まらなくなる。

 あやかしのキュートな存在感を楽しめるちょっと不思議なお話はもちろんのこと、さまざまな問題や悩みを抱えた町の人々に光を当てた人間ドラマも、本作を語る上で外せない。例えば、私たちの生活に深く関わるゴミ問題にフォーカスした一編「狩人おもちさん」。おもちさんの猫らしい振る舞いが、結果的に町の美化意識を向上させ、人々の行動も変えていく様は爽やかな余韻を残す。また、家族と喧嘩をして家を飛び出した中学生の少女・沙耶の姿を描いた「夕方六時のブランコで」は、警察官である小槇の働きぶりが光る。思春期の心に寄り添おうとする大人たちと、不器用な中学生の交流を描いた、味わい深いエピソードだ。

 不思議な猫・おもちさんが、かつぶし町でのびのびと幸せに暮らす姿を見ていると、凝り固まった心が柔らかく解けていくのを感じる。日常に疲れたり、ふとした優しさに触れたくなったとき、この「癒やし度ナンバーワン」のもふもふあやかし小説をぜひ手に取ってほしい。もっちり可愛いおもちさんの姿は、読者にとっても至福のひとときをもたらしてくれるはずだ。
■書誌情報
『おまわりさんと招き猫 月夜にはねる白ウサギ』
著者   :植原翠
イラスト :ショウイチ
価格   :781円(税込)
発売日  :2026年4月20日
出版社  :マイクロマガジン社
特設サイト:https://kotonohabunko.jp/special/omawarisan/

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「書評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる