『とんがり帽子のアトリエ』の“五条悟”っぽいキャラは誰? 原作漫画とアニメで異なる表現を解説

TVアニメ『とんがり帽子のアトリエ』が話題だ。魔法使いをめざす少女たちの成長を丁寧な作画で描いた内容で引き付け、キーフリーという名の魔法使いが五条悟ばりの強大な魔法を振るうアクションにも見入らせる。興味深いのは、白浜鴎による原作の漫画は線が太めで陰影のはっきりとした絵になっていいて、魔法が存在して不思議のない神秘的な世界だと思わせている点。漫画とアニメの『とんがり帽子のアトリエ』それぞれの魅力とは?
「虚式『茈』か!」と叫んだ人が世界にどれくらいいただろう。TV放送やネット配信されたアニメシリーズ『とんがり帽子のアトリエ』の第5話「巨鱗竜(ドラゴン)の迷宮」で、閉鎖空間に閉じ込められた弟子の少女たちを助けに来た師匠のキーフリーが、迫ってくる巨鱗竜を相手に魔法を放ったシーンでのことだ。
キーフリーは空中に飛び上がって眼下に広がる雲を割り、とてつもない大きさの水塊を竜のような姿にして巨鱗竜にぶつけて退けた。その迫力は、芥見下々『呪術廻戦』の「京都姉妹校交流会」で襲って来た呪霊たちを相手に、五条悟が放っては木々をなぎ倒し大地もえぐった虚式「茈」という術式に匹敵するもの。キーフリーが秘めた力の凄まじさを見せつけ、キャラクターへの興味を一気に高めた。
五条と同様にキーフリーも『とんがり帽子のアトリエ』の主人公ではない。主人公はココという少女で、魔法使いに憧れるあまりにキーフリーが家の近くに来たときに、見てはいけなかった魔法の発動のさせ方をこっそりのぞき見して、ペンで魔法陣を書くことから始まるということを知ってしまった。
普通のペンで魔法陣を書いても魔法は発動しない。ところがココは、祭りで謎めいた人物から魔法陣が載っていた本を手に入れた時、いっしょにペンももらっていた。それを使って本に書いてあった魔法陣を模写した瞬間、恐ろしい魔法が発動して母親もろともと周囲が石化してしまった。ココだけがかろうじてキーフリーによって助けられ、本当だったら記憶を消されてしまうところを、ココに魔法の本を与えた「つばあり帽」と呼ばれる異端の存在に強い執心を抱くキーフリーから弟子入りを許された。
以後、『とんがり帽子のアトリエ』という作品では、母親を元に戻す方法を見つけ出すことを最終的な目標として、ココの魔法使いとしての修行の日々が綴られていく。漫画を描くのは白浜鴎。マーベルコミックスやDCコミックス、そして『スター・ウォーズ』のコミックスといったいわゆるアメコミの分野で活動していたこともあり、キャラクターはくっきりとした輪郭線で描かれ陰影も濃い絵が持ち味になっている。『とんがり帽子のアトリエ』でもそれは変わらない。
そうした濃さが、どこか中世的な雰囲気を漂わせる物語の舞台にマッチし、魔法使いが登場する西洋のファンタジー小説が銅版画の挿絵ともども漫画になったような読み味を感じさせる。いかにも魔法が存在していそうな世界の雰囲気作りに貢献していると言っても良い。
これが、2026年4月から始まったTVアニメはキャラクターのフォルムこそ原作のままだが、全体に線が細くなって美麗さの増したビジュアルになっている。それが、ココも含めた魔法使いの少女たちの愛らしさや親しみやすさを増すことに繋がっている。キーフリーのイケメン度もグッと高まった感じ。当然にアニメはカラーとなっているため、舞台となっている物語世界のリアルさも増し、自然の驚異であったり巨鱗竜の恐ろしさであったりといった描写もグレードアップしている。
荒木飛呂彦による『ジョジョの奇妙な冒険』のシリーズが、物語から漂ってくるパワフルさであったり猟奇さであったりといったものを、濃いビジュアルのアニメで強く感じさせたように、『とんがり帽子のアトリエ』が漫画のタッチのままでアニメ化されても、楽しめるものになっただろう。だが、アニメは繊細さを強めることで見てスッと入って来るものにした。
加えて動き回ったり戦ったりするシーンを増やすことで、映像としての迫力を出し、目を引き付けられるものにした。五条悟ばりの活躍をキーフリーにさせたのも、ダイナミックな動きを描けるアニメだからこその表現の探求と言えそうだ。
ただ、そうしたアニメが話題になったからといって、漫画が真似する必要はない。ひとりひとりのキャラが見せる表情を、コミカルなものからシリアスなものまでしっかり描いて、楽しんで読んでいけるものになっているからだ。アニメを見て原作が気になった人は、手に取って読むと漫画ならではの面白さに気づけるだろう。何より物語自体がずっと先まで進んでいて、ココやキーフリーを見舞う運命の激動ぶりなり、周囲で繰り広げられる出来事の苛烈さを、ひとつひとつ味わっていける。
キーフリーに伴われ魔法使いになったココは、地元で呪霊の騒動に巻き込まれたところを、訪ねて来た五条悟によって見出されて東京へと連れて行かれた虎杖悠仁と似た境遇にあると言える。虎杖のように両面宿儺の強大な力を内に秘めているようなことはないが、存在自体に何か謎があるようだ。
最初に魔法の本を渡された時も含めて、世界に混乱をもたらす禁止魔法を操る「つばあり帽」から何度も狙われる。その理由が明かされていった先で、どれだけのスペクタクルな展開が待っているかが今から気になる。4月23日に出た最新の第16巻では、優しげな雰囲気を漂わせるキーフリーに、苛烈としか言い様がない過去があったことが描かれている。『鬼滅の刃』で竈門炭治郎を演じている花江夏樹が声を担当しているキャラだけあって、激情を解き放つような場面が来た時に、どのような声を聞かせてくれるのかも楽しみだ。
五条を演じた中村悠一も、『とんがり帽子のアトリエ』にはオルーギオという、キーフリーにとって見張り役に当たる魔法使いとして登場し、五条とはうってかわった厳しさと真面目さでココたちを守り導く。見やすさと迫力を伴い、声優も人気どころが揃ったアニメで世界観なりキャラクターへの理解を高めた上で、漫画を読み始めると止まっている絵も動いて見え、セリフも聞こえてきそうだ。
ココといっしょに修行に励むティティア、リチェ、アガットといた3人の魔法使いの少女たちが、それぞれの事情と向き合い超えて行こうとする姿から、頑張る気持ちを感じることもできる。魔法の暗黒面に落ちるような展開があり、街が怪物に襲撃を受けるスペクタクルな展開もある。漫画でそれらを読んだ上で、アニメでどう表現されるのかを待ち望んでも良し。アニメで描かれた部分から漫画を読んでいくのも良いだろう。
それぞれを単独の作品として楽しむことも、もちろんありだ。互いに補完しつつ独立して進むTVアニメと漫画の『とんがり帽子のアトリエ』を、追いかける楽しみが生まれた。


























