菊地成孔 × 後藤護が語る、ビートルズとホワイト・マジック「クリスチャニズムの“愛”は平均律と同じくらいの支配力がある」

菊地成孔 × 後藤護が語る、ビートルズ

 ジャズミュージシャン・菊地成孔が、小説家、批評家、アカデミシャンなど、いま注目の書籍の著者と対談する連載企画。第一弾はプレオープン企画として、2023年7月に開催された幻のトークイベント「菊地成孔のブラック・サマーセミナー」の模様をお届け。『黒人音楽史』(中央公論新社)や『悪魔のいる漫画史』(blueprint)の著者・後藤護と、「ビートルズとホワイト・マジック」について語り合った。約1万3000字の長文テキストでお届けする。

「ブラック・マジック」の両義性

後藤護『黒人音楽史-奇想の宇宙』(中央公論新社)

菊地:菊地成孔のブラック・サマーセミナー、第一回は「黒人音楽史 スピリチャルからヒップホップまで」と題しましたが、結局何がしたかったかというと、後藤さんと話したかっただけです(笑)。

 後藤さんは『黒人音楽史-奇想の宇宙』(中央公論新社)という本を出されていて、これは簡単にいうと、ブラックミュージックの歴史を西洋美術の歴史と合わせ鏡のように置きながらマニエリスムという視点を立てて見ていくと、オーバーグラウンドがほとんど出てこない歴史が成立しますよ、という内容。新進気鋭の学者さんとしていろんな大人が後藤さんにターゲットしている状況で、僕も一度、うちの事務所で3時間くらい対談させてもらったんですが、お若いのに博覧強記で何でも知っている方なので、体感的には話したいことの1〜2割、ほんの入り口で終わってしまった。というわけで、今回は思いついたことを話します。

後藤:ビートルズの話をしよう……と話す内容が決まったのが本当に直前で、一夜漬けで考えてきました。かつて土田晃之さんがダチョウ倶楽部の寺門ジモンさんを評して「15分前に学んだことをあたかも自分の長年の知識のようにしゃべる才能がある」と言っていて、今日は「菊地成孔と寺門ジモンのコスプレがイエロー・サブマリンの話をする会」と思っていただければ敷居も下がるのではと(笑)。

 ただ当然、菊地さんがビートルズをお好きだということはラジオやテキスト上で見聞きして知っていました。

菊地:光栄なことですけど、『菊地成孔の粋な夜電波』を後藤さんも聴いていただいているんですね。

後藤:世辞も修辞も抜きに僕は夜電波の菊地さんにあこがれてコスプレをがんばった修業時代もあるほどです。似なかったですが(笑)。認知科学的にいう「ベース」と「ターゲット」の飛距離の設定をロレックスのコーナーで学習しました。和田アキ子(ベース)と優木まおみ(ターゲット)の顔が似ている、というアナロジーの妙こそが綺想異風派マニエリスムの勘所なので、先達として菊地さんを仰いでいます。

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