【漫画】大学を卒業して就職直前、落ち込みそうな気持ちを励ましてくれたのは? 『最後の帰り道』の読後に残るあたたかな感情

pixivに投稿されている漫画『最後の帰り道』で描かれるのは、社会人として歩み始めることに不安を覚える学生の最後の帰り道。「……今さらこんなクヨクヨ悩みだして私…春からちゃんと社会人やれるのかな…」と嘆く女の子。彼女に寄り添ったのは意外な存在でーー。柔らかな描線で形づくられた、少し不思議で、あたたかな作品だ。
作者はダ・ヴィンチWebで『耳かき専門店で働いて 自己否定“沼”から抜け出す話』を連載していた森民つかささん(@uouououoza1)。テイストが大きく異なる本作を描くなかで感じたことなど、話を聞いた。(あんどうまこと)
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ーー本作を創作したきっかけを教えてください。
森民つかさ(以下、森民):本作の構想を思いついた当時、漫画制作も恋愛も、アルバイトなども上手くいかず、自分を他者と比べながら落ち込んでいた時期でした。誰かと関わりたいはずだけれど、自分や他者を信じられないといったジレンマを抱えていたので「ランプとか無機物な存在がひっそりと見守っててくれていたら、もう少しだけこの世界を生きることができそうかも」と思ったことが創作のきっかけでした。
ーー大学を卒業する直前の時期を題材にした背景は?
森民:最寄駅で大学生さんや専門学生さんをよく見かけるんです。私は高卒なので「親元を離れて大学生活を送っている人達ってどんな生活を送っているのかな」「自炊やアルバイトをしながら勉強しているの? すごいな……」といった一種の憧れを抱いてて、いつか彼らを主人公にした、応援歌みたいな漫画を描きたいと思っていました。
でも私は大学生活を送ったことがないので、安直に「大学生活がんばれ!」みたいな漫画は描けない。私が描けるとしたら「新しい場所へ移って、いろんなことがあるかもしれないけど、どんなあなたでも大丈夫だよ」というメッセージを込めた作品だなと思ったんです。
恋愛や友達、学校のことだけじゃなくて、コンビニの店員さんに優しくされてホッとしたとか、アパートのランプの形が気に入ってたんだよなとか。小さな日常生活にスポットを当てた漫画として本作を制作しました。
ーー本作を描くなかで印象に残っているシーンは?
森民:コンビニから出た主人公が、雨の降る夜空を見上げるシーンです。そのあとにつづく夜の帰り道は、いろいろな街並みを描かなければいけなかったので大変でした。背景がワンパターンにならないように、人通りの少ない知らない夜道を歩いて写真をたくさん撮りました。撮影しながら「暗い夜道を1人で歩くのってやっぱり怖いなー」と思いました。
ーー漫画制作に用いているツールは?
森民:ネームや下書き、仕上げまで、すべてiPadで描きました。作業が楽なのでデジタルツールを使っていますが、線をふにゃっと曲げたり、カケアミを多用したりなど、アナログ感が出るように意識して描いています。
エドワード・ゴーリーの絵本や「ムーミン」の挿絵など、カケアミを多用して暗闇の中の灯りをあたたかく表現する描写が好きで。私もそのような描写を漫画で挑戦したいと思い、本作でカケアミを多く描きました。
ーー漫画を描きはじめたきっかけは?
森民:小学生の頃から漫画を読むか、好きな作品のキャラを描いて遊ぶこどもで、漫画・アニメ好きな兄妹と漫画の貸し借りをしながら過ごしていました。美術科の高校へ進学したあと、将来の進路を決めなければいけない年齢になって「私はこのまま美大で油絵や日本画やデザインをやりたいのか?」と自問したとき、違うなと思いまして。
「私は漫画を描きたい。憧れの漫画家さん達みたいになりたい」とハッキリ思うようになり、高校生のときに初めて漫画を描いて新人賞に応募しました。
ーー緻密な描写の多い本作の制作は大変だったかと思います。
森民:本作は背景などをしっかりと描き込んだ作品だったので「本気で背景を描こうと思ったらこんなに時間がかかるのか……」というストレスはすごかったです。本作の制作直前まで連載していた耳かき店漫画はエッセイテイストの作品で絵柄もゆるかったので、作業時間の差が大きくて余計に愕然としました。
肩や腰はバキバキだし、半年以上の時間をかけてもおそらく1円にもならないし、発表しても良い反応がもらえないかもしれない。「漫画制作はこの途方もない作業時間の中に自分なりの楽しさや喜びを見出せる人しか続かないんだろうな」と思いました。
それでも小さい頃から緻密で柔らかい作画の作品に救われながら育ってきたので、緻密な表現を目指して作品を描いてる時間は楽しいです。とくにジブリ作品から影響を受けていると思います。
ーー今後の活動について教えてください。
森民:目の前の些細な日常生活を通りすぎないで、拾いあげる漫画を描いていけたらいいなと思っています。





















