『藤子・F・不二雄 SF短編集』核戦争に地球侵略まで……夏に読みたい怖いエピソード3選

『藤子・F・不二雄 SF短編集』の怖いエピソード

「やすらぎの館」

 本作は大企業の社長を務める男が主人公。仕事人間で成功者だが、頼りない側近や息子たち、そして自分が癌ではないかという疑いから、極度のストレスを抱えて疲れきっていた彼は、友達の医者から成功者たちが通う会員制クラブ「やすらぎの館」を紹介される。そこは、俳優と「おかあちゃん」によって子供の社会が再現され大人が童心に還る施設。男は館にハマって次第に年齢が乳児に近づいていくことになる。

 「地獄への道は善意で舗装されている」という格言がある。「やすらぎの館」にハマった男は、最後成功者として今まで得た社会的地位を失うのだが、一種の催眠にかかっているため表情は無表情で、一切ショックも受けない上、最後なんとも衝撃的な一言でこのエピソードは幕を閉じる。

 最初にこのやすらぎの館を紹介した医者は、本当に善意でこの施設を紹介したのか、一体なぜこの館に各業界のトップが通い詰めるのか、そして館が存在する意味は?作品を読み進めるごとにヒヤッとした感覚を味わえる、これぞ「藤子・F・不二雄のSF短編」という良作だ。

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