藤子不二雄(A)『まんが道』なぜ多くの漫画家を魅了する? 新装版の内容から考察

『まんが道』なぜ多くの漫画家を魅了する? 

 令和4年(2022)に惜しまれつつ亡くなった漫画界の巨匠、藤子不二雄(A)。藤子(A)のライフワークと言える作品が、『まんが道』だ。漫画界の不朽の名作が、このたび新装版として全10巻で刊行されることが決まった。

 『まんが道』は、藤子不二雄(A)と藤子・F・不二雄がモデルの満賀道雄と才野茂の2人が主人公。漫画に情熱を傾ける、2人の若者の成長物語が描かれる名作漫画である。事実上の藤子(A)の自伝的な作品であり、一部フィクションを交えつつも、戦後間もない頃から高度成長期における漫画界の貴重な記録にもなっている。

 『まんが道』はこれまで多数の出版社から様々なバージョンで刊行されている。豪華な仕様の愛蔵版は長らく品切れだったが、藤子(A)の死去を受けて、新装版として刊行されることになったもの。新装版では美しいカラーページも当時のままに収録され、他の単行本には未収録の扉絵なども収められている。手元に置くにふさわしい『まんが道』の決定版といえそうだ。

 さらに、巻末には『まんが道』を愛してやまない漫画家や著名人のエッセイを収録。鴻上尚史、ハロルド作石、小畑健、江口寿史、あらゐけいいち、島本和彦、秋本治、荒木飛呂彦らのエッセイが収録予定となっており、こちらもファン垂涎の内容となりそうだ。特に江口寿史は『まんが道』を座右の書とするほど愛着があると話すほどである。

『まんが道』は漫画家を目指す多くの少年少女に決定的な影響を与えたとされ、しばしパロディやオマージュが描かれている。

 例えば、今回エッセイを寄稿する小畑健は、漫画家を目指す2人の青年が主人公の漫画『バクマン。』で、真城最高が原稿を川に投げ捨てるシーンを描いている。これは『まんが道』の一場面のオマージュであろう。『まんが道』では手塚治虫の実家を訪問した満賀道雄と才野茂がその気迫に圧倒され、帰りの汽車の窓から原稿をばらまく場面があるのだ。『まんが道』は世代を超えて、漫画界に影響を与え続けている作品なのである。

 新装版『まんが道』は令和5年(2023)3月7日に1巻と2巻が同時に刊行され、順次3巻以降も刊行される予定だ。不朽の名作をこの機会にぜひ手に入れてみてはいかがだろう。

 また、『まんが道』は日本各地に“聖地”が多い漫画でもある。満賀道雄と才野茂が切磋琢磨した富山県高岡市をはじめ、漫画家たちが集ったトキワ荘があった豊島区の椎名町などが有名だ。作中では町の風景や高度成長期の日本の様子がリアルティあふれるタッチで描かれているので、読後に舞台になった街を探訪してみると、一層深く作品の世界に浸れるはずだ。

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