追悼・鳥山明氏はなぜ「神様」と呼ばれたのか……少年漫画の理想形を作った偉大な才能
誰でも楽しく読める少年漫画の理想形
他方で鳥山氏の絵の上手さについては、アクションシーンの迫力についても唯一無二のものがある。
『ドラゴンボール』ではスクリーントーンの使用が極端に少なく、キャラクターの描き込みもそこまで多いわけではなかった。しかしそれでありながら、なぜかド迫力のアクションシーンが実現できている。キャラクターの動きの描き方や視線誘導、ページ全体の構図などが考え抜かれているからこその成果だ。
この“バトルシーンを構図で魅せる”という発明こそが、鳥山氏の作品のすごいところではないだろうか。迫力満点でありながら画面がすっきりしていて見やすいため、大人から子どもまで楽しく読めるからだ。まさに少年漫画の1つの理想形と言っていいように思われる。
なお鳥山氏は元々漫画家になる前に広告関係の会社でデザイナーとして働いており、その後も『ドラゴンクエスト』シリーズのキャラクターデザインやパッケージイラストなどに長年携わってきた。空間把握能力や画面の構成力、デフォルメの技術が活かされていたのは、漫画家としての仕事だけではないのだろう。
2024年秋には、鳥山氏が原作・ストーリー・キャラクターデザインに関わった完全新作アニメシリーズ『ドラゴンボールDAIMA』が公開される予定。そして3月20日には、Disney+にて『SAND LAND: THE SERIES』の配信も控えている。魅力的な世界を堪能する機会がまだたくさん残されているので、この機会に鳥山氏の才能にあらためて想いを馳せてみてほしい。
最後に、鳥山氏のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
【写真】鳥山明が描き下ろした悟空、クリリンや、ミスターサタン、チチなど新作主要キャラ