『ドラゴンボール』なぜ世代を超えて愛されるのか  バトル要素と新規開拓戦略を考察

『ドラゴンボール』なぜZ世代にも人気?

 鳥山明の名作漫画『ドラゴンボール』の凄い点を挙げるとすれば、あらゆる世代に人気があり、しかも読まれていることだろう。手塚治虫や石ノ森章太郎、赤塚不二夫の漫画のような巨匠の作品でさえ、タイトルこそ知っているものの、「一作も読んだことがない」という人は少なくない。手塚ですら『ブラック・ジャック』は幅広い層に人気だが、『鉄腕アトム』や『リボンの騎士』の原作を読んだ人は少数派なのだ。

 ところが1984年からスタートし1995年に連載が終わって既に28年ほど経過している『ドラゴンボール』は若い世代にも漫画が広く読まれ、アニメも見られている。ゲームも遊ばれている。そして、作中に出てくるキャラクターや技の名前も知られている。連載が完結してからも、あらゆる世代に読まれ、新しい読者を獲得している。そんな漫画は他に『ドラえもん』くらいではないだろうか。

 『ドラゴンボール』が世代を超えて読み継がれる理由はどこにあるのだろうか。なんといっても、手に汗握るバトルである。悟空とベジータ、フリーザなどの対決は今見ても興奮するし、ワクワクする。そして鳥山の絵の上手さである。まったく古さを感じさせないし、現代の感覚でも新鮮だ。キャラクターの描き分けも巧みであり、なにより悟空の「強い奴と戦いたい」というストレートな性格も感情移入しやすい。

 技の名前もインパクト抜群である。かめはめ波や元気玉など、誰もが知る技がてんこもりなのだ。そのポーズは真似したくなってしまうほど、現代の10代にとっても魅力的に感じる。特にピッコロの技のひとつマカンコウサッポウは、インスタグラムで女子高生にも大ブームとなり(実際の技のポーズは違うのだが)、世界中で真似する人が続出した。

 単行本が完結しているのも魅力だ。また、全42巻という巻数も、昨今の長期連載漫画と比べるとそれほど長くなく、ちょうどいい。『ONE PIECE』も人気なのだが、巻数が100巻超えのため、集めるとなると資金も大変だ。また、雑誌ではなく単行本で漫画を読む世代にとっては、未完だとなかなか手を出しにくいらしいが、『ドラゴンボール』なら安心して読める。

 アニメもサブスクで見ることができるため、手を出しやすい環境にある。現にコロナ禍の自粛生活中、『ドラゴンボール』のアニメを見てファンになった人は多いようだ。単行本もしっかり重版されているので、手に入れやすい。ユニクロなどのメジャー企業とコラボしており、新しい商品がどんどん出ているので、新規のファンもグッズを入手しやすい。こうした様々な要因が重なり、『ドラゴンボール』は読み継がれる作品になっているのだろう。

 もちろん、作品そのものが素晴らしく、漫画としてエンタメ性が高いのは言うまでもない。『ドラゴンボール』はきっと、20年、50年先も読み継がれている作品になっているはずだ。

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