ファンタジア、電撃小説、スニーカー……老舗ラノベ新人賞〈大賞〉受賞作がそろい踏み 各賞の傾向は?

老舗ラノベ新人賞の傾向

滅多に〈大賞〉が出ないスニーカー大賞

 スニーカー大賞は滅多に〈大賞〉が出ないことでも知られている。第27回ですめらぎひよこ『我が焔炎にひれ伏せ世界』(スニーカー文庫)が12年ぶりの〈大賞〉作品となったが、第28回でも凪『人類すべて俺の敵』が受賞して、2年連続での〈大賞〉作品を輩出した。

 急速に進化したが故に滅びへの道も近づいている人類を心配した《その者》、いわゆる神様が人類に課題を与えた。結果、人類の間に命を吸い取られて死んでしまう《魂魄剥離》の現象が大発生し、その原因が1人の少女に押しつけられた。少女は《魔王》とされ、人間から選ばれた10人の天使に追われることになった。

 苛烈な運命を押しつけられた格好の少女だったが、助けを求めていた少女に手を差し伸べたのが高坂憂人という名の少年。憂人は全世界が敵とみなす少女をかくまい、守りながら次々に向かってくる天使を相手に戦っていく。神が与えた試練は《魔王》が死ぬか人類が滅びるかの2択しか結果がなかったはず。そこに憂人が関わったことで神も予想していなかった道が生まれた。運命を自分で切り開く大切さを教えられる展開だ。

 賞自体は長く続いているが、第18回で優秀賞となった久慈マサムネ『魔装学園H×H』(スニーカー文庫)以降、アニメ化されるような作品を送り出せていない。2年続けての〈大賞〉贈賞や、伝奇、ラブコメ、ミステリなど多彩なジャンルの作品の入賞を通して次の1手を探っているのかもしれない。第27回で〈銀賞〉の水鏡月聖『僕らは『読み』を間違える』(スニーカー文庫)が「このライトノベルがすごい!2024」で新作5位、総合7位に入る評価を受けたこともあり、続く作品を探そうと新規性のある作品を貪欲に取り込む動きが続くかもしれない。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「書評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる