東京創元社、創立70周年を記念する豪華企画が目白押し! 2024年新刊ラインナップ説明会レポ

東京創元社、2024年の注目作品は?

 ミステリ・SF・ファンタジー・ホラーの専門出版社である東京創元社の2024年新刊ラインナップ説明会が、2月15日(木)に都内で開催された。2014年からスタートした新刊ラインナップ説明会は今回で9回目。2024年は東京創元社の創立70周年となり、例年に増して豪華なラインナップが発表されたほか、70周年記念のフェアやプレゼントキャンペーンについても明かされた。昨年度に続き、池澤春菜が司会を務め、作家の丸山正樹、今村昌弘、高島雄哉、翻訳者の上條ひろみが登壇した。(メイン写真:左から池澤春菜、今村昌弘、丸山正樹、高島雄哉、上條ひろみ)

丸山正樹『デフ・ヴォイス』創元推理文庫版

 注目の国内ミステリとして紹介されたのは、丸山正樹『デフ・ヴォイス』創元推理文庫版、今村昌弘『明智恭介 最初でも最後でもない事件(仮)』、真門浩平『ぼくらは回収しない』、米澤穂信『冬季限定ボンボンショコラ事件』の4作品。

 一人目のゲストの丸山正樹は、手話通訳士を主人公としたミステリ小説『デフ・ヴォイス』シリーズにちなんで、手話通訳士とともに登壇。同作は丸山のデビュー作として2011年に文藝春秋より刊行されたが、続くシリーズは東京創元社より刊行されていた。昨年末には、NHKにて草彅剛の主演でドラマ化されたことも記憶に新しい。今回、一部を改稿して改めて創元推理文庫として刊行されることになった。丸山はドラマの仕上がりについて「ろう者の当事者が役者として起用されていて、さらにその経緯もドキュメントして制作されていて感激した」と感想を語った。また、今回の文庫については「内容は大きく変更していない」としつつ、人気キャラの何森稔がシリーズを重ねるごとにイメージが変わってきたため、当初の「小柄で筋肉質」という設定を調整したことを明かした。13年前に刊行されたデビュー作を改めて読んだ感想については、「当時の自分の鬱屈とした感情が読み取れたが、それが却って物語の力となり、読者に届いたのかもしれない」と語り、さらにシリーズ第五弾も構想していることを来場者に伝えた。

丸山正樹のトーク時には、手話の同時通訳も。

 続くゲストの今村昌弘による『明智恭介 最初でも最後でもない事件(仮)』は、ベストセラー『屍人荘の殺人』シリーズの人気キャラ・明智恭介を主人公とした連作短編小説だ。明智恭介のキャラクターについて「スマートに事件を解決するタイプではない。失敗を繰り返しながら、なんとか真相に迫るタイプで、身近にいたら面白い先輩というイメージ」と語り、オフビートな笑いも読みどころになっているという。トリックは担当編集者とともに考えたものもあり、苦し紛れに生み出したトリックを担当編集者が実践したところ、ちゃんと成功したという溢れエピソードも披露された。同作は初夏の刊行に向けて、最後の部分を執筆中だという。

 SF海外作品の注目作は、不朽の名作「星を継ぐもの」シリーズの第5部にして最終巻『ミネルヴァ計画』をはじめ、マーダーボット・ダイアリーシリーズの最新刊となる『システムの崩壊(仮)』、アン・マキャフリー『歌う船[完全版]』の3作品。国内作品の注目作は、第12回創元SF短編賞受賞作を含む松樹凛のデビュー作品集『射手座の香る夏』、第4回創元F短編章受賞作を含む宮西建礼のデビュー作品集『銀河風帆走』に加え、『横浜駅SF』で注目を集めた柞刈湯葉の最新長編『記憶人シィーの最後の記憶』の3作品を紹介。

『はじまりの青 シンデュアリティ:ルーツ』装画:neco

 SFコーナーのゲストとして登壇したのは、SF作家としてのみならず、アニメやゲームのSF考証なども手がける高島雄哉。高島は今年3月、現在放送中のアニメ『SYNDUALITY Noir』の起点を描く小説『はじまりの青 シンデュアリティ:ルーツ』を東京創元社より刊行する。同シリーズは、ディストピアからの復興を描くハードSFだ。SF考証という仕事の内容を問われた高島は、「アニメやゲームでは、シナリオの段階から参加し、作品の土台となるSF要素をリッチにしていく。その世界で使われている文字なども作るため、ゲームの世界では『ワールドビルダー』とも呼ばれる」と解説。『SYNDUALITY』シリーズの魅力については、自身が熱中している数学の理論を取り入れたハードSFでありながら、冒険活劇としても楽しめる作品だと推した。

エリー・グリフィス『見知らぬ人』の翻訳などでも知られる上條ひろみ。

 海外ミステリの注目作は、エヴァ・ドーラン『終着点(仮)』、アンソニー・ホロヴィッツの超人気シリーズ最新作『Close to Death(原題)』、クリスティン・ペリン『白薔薇殺人事件(仮)』の3作品。ゲストとして登壇した上條ひろみが翻訳を手がけた『白薔薇殺人事件(仮)』は、犯人当ての大傑作で東京創元社が“激推し”する作品だという。上條ひろみは本作について、「伏線が細やかに、これでもかというほどに張られていて、謎解きミステリの面白さを堪能できる。アガサ・クリスティなどの正統派ミステリが好きな方にはもちろん、初めて海外ミステリに触れる方にもぜひ読んでほしい」と熱弁した。

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