『環と周』『この世は戦う価値がある』……漫画ライター・ちゃんめい厳選! 10月のおすすめ新刊漫画
『音盤紀行(2)』毛塚了一郎先生
レコード(音盤)には音楽だけじゃなく、作り手やかつての所有者の想いや記憶が詰まっている。そんな、レコードに秘められたストーリーをオムニバス形式で描く『音盤紀行』。音楽をテーマにしたマンガは数多くあれど、音楽の記録媒体が主題となっている作品は珍しい。最新刊2巻では、伝説のレコードを巡る争奪戦、異国の地で三線を奏でる少女と亡命ミュージシャンが紡ぐ物語などの新しいエピソードはもちろん、海賊放送のニッキとウィルコや、ミヤマレコードの歴美など1巻にも登場したキャラクターたちのその後の物語も収録されている。
好きな時に好きな場所で手軽に音楽が楽しめる、ストリーミングサービス全盛の今。レコードはそんな現代とは何もかも真逆な音楽媒体ではあるけれど、音楽を物体として所有するということ、その一枚一枚を後世に受け繋いでいくこと........それによって生まれる物語はレコードに収録されている音以上に尊く輝いているのかもしれない。レコードという媒体に改めて注目したくなる。
『スペアタウン ~つくろう自分だけの予備の街~』清野とおる先生
『東京都北区赤羽』『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』などで知られる、清野とおる先生の最新作『スペアタウン ~つくろう自分だけの予備の街~』。清野とおる先生といえば言わずもがな“赤羽”だが、最新作では有事に備えホームタウン・赤羽の代わりになる街「スペアタウン」を探す。
ホームタウンの代わりになる街を探すのだから、これまでのように不思議なスポットや魅力的な街人に突撃することもなく、ただ暮らすように街を歩く........。『スペアタウン ~つくろう自分だけの予備の街~』は、これまでとは違う清野先生の新たな視点での街歩きを堪能できる一冊となっている。
単行本化にあたり、連載時には描ききれなかった各街の「こぼれ話」や、清野先生が最近思っているとあることをテーマにした「あとがきマンガ」が新たに収録されている。また、単行本カバーの「そで」には、なんだか運気が上がりそうな嬉しいオマケも。リアルタイムで連載を追っていた人にもぜひおすすめしたい一冊だ。