文化功労者、漫画家・里中満智子を選出「漫画が不当に扱われることに焦りを覚えて漫画家を目指した」

サイン色紙52万6000円で落札レポ

  10月20日、政府は、2023年度の文化功労者に漫画家の里中満智子氏(75)ら20人を選んだと発表した。文化功労者の顕彰式は、11月6日に東京都内のホテルで開催される。

  里中氏は1964年、まだ高校2年生だった時に『ピアの肖像』が第1回講談社新人漫画賞を受賞し、デビュー。これまでに500作品以上の漫画を発表、持統天皇を主人公とした『天上の虹』などの代表作をもつ。マンガジャパン代表理事を務め、日本漫画家協会理事長として漫画家の地位向上のための活動を長年にわたって行っており、漫画表現の自由や、漫画の原画を守る活動なども続けている。

  里中氏は21日に公式ブログを更新。「思ってもいない文化功労者として選出されることになり、身に余る光栄と受け止めています。漫画が子供たちに悪影響を及ぼすと非難されていた時代に育ち、漫画が不当に扱われていることに子供ながらに焦りを覚えたことが、マンガ家を目指す道につながりました」と、漫画家を目指していた子ども時代を振り返った。

  また、「ドラマ表現としての漫画の可能性を見せてくださった諸先輩方の素晴らしい作品群があってこその漫画の世界への憧れでした。自分なりの新しい表現にチャレンジして努力してきたつもりですが、自分を支えてくれたのは道を切り開いてくださった先輩方、刺激しあった多くのマンガ家たち、そして読んでくださった読者の方々や、励ましてくださった周囲の人たちです。皆様に感謝すると共に、漫画を描ける喜びをもうしばらく味わうべく努力を続けたいと思います」と、今後への抱負を述べた。

  漫画家の間からも祝福の声が上がった。漫画家であり国会議員でもある赤松健はXを更新し、「里中満智子先生が2023年度の文化功労者に選ばれました。おめでとうございます! 現在、日本漫画家協会の理事長であり、特に著作権関連や表現規制問題、生原稿の保存などで(我々漫画家は)ずっとずっとお世話になっております🙇。今後も変わらぬご活躍を期待しております!」と讃えた。

  さて、文化功労者といえば、これまでは理学、医学、文学などの学術分野や、歌舞伎、日本画、西洋画などの伝統的あるいは評価が確立されている分野から選ばれるイメージが強かった。2000年以降はかなり選ばれる分野が多様になり、長嶋茂雄などのスポーツ選手も選ばれている。

 これまで選ばれた漫画家の文化功労者には、横山隆一、水木しげる、ちばてつや、萩尾望都、大島弓子などがいる。アニメーション関係では宮﨑駿や富野由悠季が、ゲーム関係者では『マリオシリーズ』や『ゼルダの伝説シリーズ』などの開発に関わった任天堂の宮本茂が話題になった。

  ただ、手塚治虫、石ノ森章太郎、藤子・F・不二雄などは文化功労者に選ばれていない。皆、60~62歳という若さで亡くなっていることや、平成の初め頃というまだ漫画の評価が確立されていない時期に亡くなったことも影響していると思われる。

  ちなみに、手塚は1989年に亡くなっている。1994年に横山隆一が漫画家で初めて文化功労者に選ばれたことを考えると、特に、手塚はあと10年ほど長生きしていれば、文化功労者に選ばれていた可能性が高かったのではないだろうか。今回の里中満智子氏の選出は、漫画の評価が年々上がっていることを象徴する出来事と言え、非常に喜ばしいといえる。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる