大森靖子×漫画家イララモモイ対談「恋」と「音楽」人気漫画『付き合えなくていいのに』の魅力

■バンド仲間との恋愛模様を赤裸々に描く人気漫画

大森靖子氏はイララモモイ氏の人気漫画『付き合えなくていいのに』をはじめ愛読していたこともあり対談が実現

  マンガ配信サービス「サイコミ」で連載中の人気漫画『付き合えなくていいのに』の作者・イララモモイ氏は、個性的な絵柄で恋愛を描写した作風で知られる一方、日本のロックを中心に音楽全般に造詣が深い。11月19日に単行本1巻が発売された『付き合えなくていいのに』では、主人公・清水絵梨子が中学時代に密かに憧れていた北山時彦と大学生になってから偶然再会し展開される恋愛模様を、ユーモアを交えながら赤裸々に描き出している。

 そんなイララ氏が漫画制作において絶大な影響を受けていると語るのが、音楽家・シンガーソングライターの「超歌手」大森靖子氏である。そんな大森氏の音楽を「いつも仕事中に流しているほど」愛聴するイララ氏は、曲中に登場する女性の心情表現が『付き合えなくていいのに』の創造の源泉になったと明言する。

 今回、イララ氏たっての希望で大森氏との対談が実現。ちなみに、今年メジャーデビュー10周年を迎えた大森氏は、なんと、イララ氏の作品を早くから認知していた愛読者の一人。ネットで熱狂的な支持と共感を集める2人の魅力はいったいどこにあるのか、漫画家と音楽家、異なる視点から「恋」と「音楽」と「漫画」について存分に語っていただいた。

■曲に刺激を受けて漫画を描いている

単行本1巻が発売されたばかりの『付き合えなくていいのに』

――今回の対談は、イララモモイさんたっての希望であると伺っています。大森靖子さんと対談をされたいと考えた理由は何でしょうか。

イララ:私はずっと大森さんのファンで、漫画を描くとき、大森さんの歌詞から影響を受けすぎています。しかも、初めて描いた漫画をTwitter(現:X)に載せたとき、大森さんに“いいね”をしていただいて、すぐにDMで長文のメッセージを送ってしまいました。今回、まさか大森さんとご対面できるとは思わなかったので、本当に嬉しすぎます。

大森:私がイララさんの漫画と出合ったきっかけは、偶然なんです。普通にTwitterで流れてきた漫画が面白くて、“いいね”をしたのが始まりです。

イララ:普通に面白いと思っていただけたのが嬉しいです。私はあまり恋愛経験がないのですが、片想いをしている女の子の心情を描くのが好きなんです。大森さんの音楽には恋をする女の子が登場しますが、そのイメージを膨らませて、漫画を描くことが多いんですよ。

ーー『付き合えなくていいのに』はイララさんの実体験が元になっている部分も多いそうですね。

対談では大森靖子氏への多大な影響を語っていただいた

イララ:私は学生時代に軽音楽部に所属していたので、『付き合えなくていいのに』ではバンドサークルが舞台になっています。

大森:『付き合えなくていいのに』読みました。面白かったです。あ、こういう子バンドとか音楽業界にもいるっていうシーンが多かったです。私は自分を登場人物に当てはめるなら、主人公の清水絵梨子ではなく、先輩の遠藤詩歌タイプかな。相手を雑に扱っているふりしつつ、自分しかあげられないものを提供して、これを超えられる? と牽制してしまうというか。

イララ:本当ですか!? 実は詩歌編を描いているとき、ずっと大森さんの曲を聴いていたんです! 特にモノローグを作るときに参考にしていたので、凄く嬉しいお言葉です! 漫画には登場していないんですけれど、詩歌が男の子の服を洗濯して、自分の柔軟剤のにおいを付けて返す話を考えたりもしました。

大森:私なら、服を自分好みに全部買い換えちゃうかも(笑)。

イララ:(笑)それ、漫画に描いたら、凄く魅力的なキャラができそうです。自分の好きな男に、周りに気づかれずに牽制するために服を全部買い換えるキャラとか。めちゃくちゃいいですね。

大森:ぜひ、今度作中に登場させてください(笑)。

――イララさんは大森さんの音楽にかなり刺激を受けているのがよくわかります。他にも創作で影響された点はありますか。

イララ:読切漫画の『クソデカ片想い感情女子大生ヨネハラ』はかなり影響を受けてできた作品です。大森さんの「愛してる.com」の歌詞にある「偶然会いたい」というフレーズを引用して、「私はいつも偶然会いたい」というモノローグを入れました。恋愛感情の解像度を高めてくれる大森さんの曲と出合わなかったら、私は漫画を描けなかったと思います。

大森:私は『付き合えなくていいのに』とかイララさんの漫画を読んで「この感情、わかる~!」と共感していましたが、自分の歌詞をもとに描いていらっしゃったのであれば、私は自分に共感していたということですよね(笑)! イララさんのことは、私と同じ感覚の持ち主なのかなと思っていたので、今日は恋バナが楽しめるかなと思って来たんですよ。まさか、私の歌詞から感情表現を膨らませていたなんて、本当にびっくりしています。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる