上白石萌音「朗読だと文章をより深く味わえる」初エッセイ『いろいろ』Audible版インタビューで聞く本の魅力

上白石萌音が語る、朗読の魅力
Audible版『いろいろ』(特典版)

 俳優のほか歌手、ナレーター、声優など幅広く活躍する上白石萌音による初エッセイ『いろいろ』(NHK出版)のAudible版が、12月2日より配信される。2021年9月に発表された『いろいろ』は発行部数7万部を突破し、台湾版も刊行されるなど、大きな話題となった。今回のAudible版では、上白石本人が朗読を担当している。

 アニメ映画『君の名は。』(2016年)以降、声優としても評価が高い上白石は、同作のAudible版でナレーションを担当したのに続き、今回あらたに『いろいろ』の朗読を担当。自分が書いたエッセイを朗読するとなると、また違った緊張感があるという。その心境について、本人に話を聞いた。

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文章をより深く味わえるのが朗読のよさ

――エッセイ集『いろいろ』について振り返りたいです。ご自身にとってどんな作品ですか?

上白石萌音(以下、上白石):ありのままの本音を書いた作品です。でも改めて読むと「少しカッコつけてるな」とか「ちょっと美化してるな」と感じる部分もあります(笑)。10~20年前の遠い過去ならまだしも、3~4年前の自分に会うのは少し気恥ずかしいです。まだ割り切れていないムズムズ感はありますが、改めて文章の組み方や装丁が素敵な本だとも感じました。贅沢に作らせてもらった1冊です。

――本作に収録された「懐かしむ」というエッセイでは、3年前と変わらない自分について言及されています。発売からさらに3年経った今、変化はありましたか?

上白石:大きく変わっていないから気恥ずかしいと感じるのかもしれません。でも「今だったら、もっと深く踏み込んで書けることがあるな」と考えられているので、次の自分に向けて一歩踏み出す段階に差し掛かっているのかなとも感じています。

――上白石さんは、声優として参加した映画『君の名は。』のスピンオフ小説『君の名は。Another Side:Earthbound』(KADOKAWA)でAudibleの朗読に初挑戦されています。Audibleというメディアについて、どのような印象を持っていますか。

上白石:とても好きです。文章を改めて音声で聞くと、言葉の妙や文章の素晴らしさに気付くことが多々あります。文章をより深く味わえるのが朗読のよさ。目で読むと意外と読み落とす表現もあるじゃないですか。「てにをは」や語尾、ちょっとした単語とか。一字一句をしっかりと伝えてもらえるのは、リスナーとしても嬉しいです。

 また、活字は自由度が高いので音や風景を想像できますが、オーディオブックになるとまた別の解釈をもらえるなと感じます。そこに別の具体性を重ねたら、次は実写になるようなイメージ。声の要素が増えることで世界観や解釈が限定される部分もあるのかなと思いましたが、むしろ語感が広がるように感じました。Audibleには限定と解放の不思議な可能性がある気がします。

――個人的にはドラマ化された『いろいろ』も観てみたいです。

上白石:もしドラマ化したら、その時は自分の役を違う俳優さんにお願いしたいです(笑)。

――では、ご自分のエッセイを改めて朗読するのは、どんな心境でしょう?

上白石:まったく別の体験でした。他の文章に感じる「ああ、素敵だな……」と感じる瞬間はあまりなくて、「ああ、そういえばこんなことを書いたな……」という感じ(笑)。でも不思議なことに読みにくい文章ではありませんでした。

 振り返ってみると、原稿を書き上げて推敲するタイミングで読み上げて確認していたなと。読んでいて嬉しくなるリズムを自分なりに考えた記憶があるので、図らずも今回のオーディオブック化の素地が作られていたのかもしれません。その点は当時の自分に感謝したいです。

――収録エッセイ「読み上げる」は「国語の時間の音読が憂鬱だった」という内容でした。

上白石:本当は朗々と読みたいのに、それが恥ずかしくてできないから音読が嫌だったんです。でも、今回「読み上げる」を文字通り読み上げられたことは、過去の自分自身への贈り物のような趣があって、感慨深い時間でした。

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