ことのは文庫・佐藤理編集長インタビュー 「心に残る物語は、いつまでも長く愛される」

ことのは文庫編集長インタビュー

小説投稿サイトとのコラボしたコンテストも

――ことのは文庫ではSNSなど、読者へのアピールが積極的という印象がありますね。

佐藤:たくさんの人に知ってもらうためにSNSは欠かせないツールだと感じています。媒体によって同じ情報でも反応がぜんぜん違うのも面白いですし、本当に奥深い世界だと思います。僕らがSNSに積極的なのは、せっかく良い作品を刊行するのだから皆に知ってもらいたいという気持ちが強すぎるからだと思います。ようするに推し活なんです(笑)。

――なるほど。その気持ちは大事ですね(笑)。

佐藤:はい。文庫は毎月たくさん刊行されていますし、何もしなければまず埋もれてしまうでしょう。SNSだけでなく、書店で実施するフェアや、インターネットを使ったコンテストなどもアピールの一環として取り組みを強化しています。

――ことのは文庫ではフェアもたびたび開催していますよね。猫が活躍する作品を集めた「2月22日はねこの日ですにゃフェア」や「秋のごほうびフェア」など、趣向もユニークですし、3周年記念フェア特典の切符風しおりなども凝っていました。

佐藤:フェアは、営業部からの提案です。日頃から書店を回ったりして様々なフェアを見ているだけあって、いつも面白いアイデアが出てくるので感心します。フェアに関しては今も企画中のものがたくさんあるので、これからも楽しみにしていてください。

『大奥のご幽筆 ~あなたの想い届けます~』

――ことのは文庫では、小説投稿サイトとコラボレーションしたコンテストからも書籍化作品が生まれています。コンテストに関して、その成果や課題などあればお聞かせください。

佐藤:コンテストを実施することで、応募してくれた皆さんを中心に、ことのは文庫が広く知られていく成果を感じています。最初に実施したエブリスタとの「ことのは文庫ライト文芸賞」では非常に多くの応募がありましたし、魔法のiらんどと取り組んだ「『心に沁みる和風あやかしの世界』をテーマにしたコンテスト」や「ことのは文庫『泣ける文芸』小説コンテスト」では、素晴らしい作品に出会うことができました。とくに後者の「ことのは文庫『泣ける文芸』小説コンテスト」の入賞作で、今年2月に刊行された『大奥のご幽筆 ~あなたの想い届けます~』(菊川あすか著)は、キャラクター文芸の中でも珍しい大奥を舞台とした江戸の物語ですが、大変好調ですぐに続編の刊行(今秋予定)も決まりました。6月には大賞作の『君はいつも、迂回する』(柑実ナコ著)も発売され、ラインナップの強化にも繋がっています。一方で課題として感じたのはテーマや条件によって応募される数や内容が大きく異なることでした。それはコンテストを実施する他のレーベルとも共通の悩みだとは思いますが、こうしたコラボレーションによって広がりも生まれるので、これからも経験をフィードバックしながら続けたいと思います。

――ことのは文庫は、2023年6月で創刊4周年を迎えました。これからの展望について教えてください。

佐藤:この3年の間に色々な挑戦をして、あらためて思うのが「本って素晴らしい」ということです。「本」っていうのは、そこにいる登場人物の目を通してその人の生き方を感じて自分の経験とすることができますし、仲間と感想を語り合えるコミュニケーションのツールでもあると感じています。僕としてはその本を、作家が心血注いで作り出した物語を、できるだけたくさんの人に届くように尽力したいと思っています。そのためには紙の本だけでなく、これからは電子書籍のことも正面から取り組んで考えないといけないし、4周年を迎える今だからこそ、本に関わるすべての人たちと一緒になって、コンセプトにしている「心に響く物語に、きっと出逢える」ように努めていきたいと、思いをあらたにしています。

■関連情報
ことのは文庫公式HP
https://kotonohabunko.jp/

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