半年で1万個売れた「積読ホルダー」生みの親が明かすこだわり「積読を消化し新しい本を買う循環を」

「読みたい!」と買った本が、なぜか机の上で小さな山になっていく。さらに新しい本が次々と加わり、気づけば下の本はすっかり遠い存在に――。そんな読書好きにはおなじみの「積読(つんどく)」を、ただ片づけるのではなく、実際に本を読むきっかけへと変えてくれるのが、ビジネス書出版社のクロスメディア・パブリッシングから発売された「積読ホルダー」。2025年9月末の一般販売開始から半年で1万個を売り上げたヒット商品だ。生みの親であるクロスメディア事業開発部・高橋孝介に、開発の舞台裏と、商品が広げる新しい読書体験について聞いた。
「これ、商品にできるかも」きっかけは社内の企画大会

――ありそうでなかった「積読ホルダー」ですが、その開発のきっかけを教えてください。
高橋孝介(以下、高橋):きっかけは四半期に一度実施している、全社から新しい出版企画や商品、サービスの企画を募る社内の「企画大会」です。「積読ホルダー」は、その第一回目で1位に選ばれた企画でした。弊社は出版社であることから「積読」とは切り離せないというか。会社の机はもちろん、家でも読めていない本が積んである。それをどうにかできたらいいなという、自分の課題解決でもありました。企画大会で支持を集めた企画は「実際に商品化する」、といったロードマップが事前に決まっていたわけではありませんが、「これは商品化できるのではないか」と思い、動き出すことにしたんです。
私は現在事業開発部におり、過去には疲労回復専用ジム『ZERO GYM』を立ち上げ、新潟県の寝具メーカー・越後ふとんさんとコラボレーションして『脱力まくら』というプロダクトを作った経験もありました。書店営業チームから、書店さんが本以外にも販売できる商品を求める声があることも聞いていたので、本を読む方の役に立ち、書店さんで販売していただけるような商品をつくりたいと考えて、企画を出した経緯があります。
――「積読ホルダー」というネーミングも、その企画大会のときに決まっていたのでしょうか。
高橋:はい。提出する企画は、Xのポストのように140文字のテキスト情報という制限があったので、なるべくシンプルに伝わりやすいものを、と考えました。名前を見ただけで、何のための商品か分かることは大事なんですよね。私は書籍の企画・編集もしていますが、本も最初にタイトルがしっかり固まったものは途中でブレずに本づくりができます。
「面白そう!」と思った気持ちは、どこへ行くのか

――読みたいと思って買ったはずの本なのに、なぜ積み上げてしまうんでしょうね(笑)。
高橋:不思議ですよね。買ったときには、「面白そう!」とすごく気持ちが盛り上がっていたはずなのに、気づくと次々に買った本で山になっていく。先日、積読ホルダーを文芸評論家の三宅香帆さんのYouTubeチャンネルでご紹介いただいたのですが、三宅さんご自身も「積読している」というお話を聞いて、これはもう、みんなが抱えている共通の課題なのだと勝手に納得してしまいました。
――読む気がないわけではないのに、読めないんですよね。
高橋:積読の問題の一つは、その存在を忘れてしまうことではないかと思ったんです。常に目に入る場所に本があれば、「これを読みたいと思っていたんだ」と思い出せる。だから「積読ホルダー」は、たくさんの本を収納するための棚ではなく、直近で読みたい本を机の上に置き、目に入る状態に(見える化)するためのものにしようと思いました。
――「積読ホルダー」は三段のつくりですが、この段数はどのように決めたのでしょうか。
高橋:積読は、積もうと思えばどこまでも積めますよね。SNSを見ていると、「身長くらいまで積んでいる」なんていう人も見かけるくらい。でも、その高さになるともう、積み上がった本をどかして、下の本を取り出すなんてこと、なかなかできないじゃないですか。その「すぐに取れない」という状態になるのも、「積読」になる理由。
ならば、しまうのではなく、手に取りやすい状態を作りたい。そのためには、あくまでも机の上に置けるサイズで、近いうちに読む本を並べることが大切だなと。実際に、四段の試作品も作りましたし、追加パーツで段数を増やす仕様にすることも検討しましたが、サイズや使い勝手を考えると、三段がちょうどよいと落ち着きました。
――このサイズも絶妙ですね。机の上に置いても圧迫感がありません。
高橋:置く本のサイズは一般的な四六判の単行本を基準にしています。文庫本も置けますし、少し大きな本にも対応できます。本の表紙や背表紙の見えやすさも重視しています。存在を認識できるほうが、「読もう」と意識できます。
本をしまう棚ではなく、“次に読む本”を置くための道具
――棚板の端が少し立ち上がった形になっています。この角度にも理由があるのでしょうか。
高橋:実は、最初の試作品には、このL字の角がありませんでした。平らな板を柱でつないだ形だったんです。でも、それを客観的に見たとき、「これでは、ただの卓上ラックと差別化できないな」と。それから、商品には、機能だけでなく、使う楽しさや気持ちよさも大切だと思っています。L字の角をつくったことで、本を置いたときにピタッと収まる。そのフィット感があることで、「本のための商品」である意味を感じてもらえるかなと。
――初めて触ったとき、見た目よりもずっしりと重さがあって驚きました。
高橋:本って1冊でも意外と重いんですよね。何冊かを載せるとなると、棚が緩んだり、たわんだりしない強度が必要です。棚板を可動式にする案もありましたが、動かせる構造にすると、どうしても緩みが出る可能性があります。本の重さに耐えて、びくともしない状態にしたかったんです。
薄く、軽くしたいという気持ちはありますが、耐久性とはトレードオフになります。最終的には、必要な強度を実現できる素材として、スチールを選びました。約2.2kgあるので、2リットルのペットボトルより重くなっています。店頭で扱っていただく際にも、「重いので気をつけてください」とお伝えしています。
――底面にはクッション材も付いています。
高橋:机に傷がつかないかと懸念される方もいらっしゃいますし、本を取るときに本体が滑らないようにする目的もあります。使っているときに生まれる小さなストレスを、できるだけ減らしたいと考えました。
――あらゆるところに、こだわりが詰まっていますね。
高橋:「神は細部に宿る」と言いますが、妥協して出した商品が、大成功することはあまりないと思うんです。少なくとも、自分が納得し、自信を持てる形にしてから世に出したいと思いました。
積読を“予定”に変える。使う人が広げたホルダーの余白
――付属するマグネットには、「読むタイミング」を付けることができます。この機能は、どのように生まれたのですか?
高橋:スチール製なのでマグネットが付くことに気づいて、本を置く場所以外のスペースを活用して、読み進める仕掛けをつくれないかと考えました。弊社はビジネス書の出版社ですが、「期限を決めると行動できる」「夢に日付を入れる」といった話はビジネス書の中でもよく出てきます。積読した本を読めないのは、読むタイミングを決めていないからではないか。ならば、「いつ読む」と決められる仕掛けがあれば、読む動機になるのではと考えたんです。
――読むタイミングを決めてしまうことで、積読が「予定」に変わるんですね。
高橋:そうですね。YouTubeチャンネルの『積読チャンネル』さんや『ほんタメ』さんでも積読ホルダーをご紹介いただきましたが、両番組ではオリジナルマグネットも生まれ、マグネットがあることで使い方が広がるという気づきもありました。
『積読チャンネル』さんでは「趣味」「仕事」と本の種類をカテゴライズするマグネットが、『ほんタメ』さんでは「バズってるから買った」という「バズ本」、「難しそうだから後で読む」という「難しい…」というマグネットが生まれました。これは本を購入した理由や積読している理由がマグネット化された、ということです。
もともとは読むタイミングを決めるための機能でしたが、好きなマグネットを貼ってアレンジする楽しみの幅を、利用者の方が広げてくれている印象です。
――発売後、反響として面白い活用法はありましたか?
高橋:漫画家の方が、作品づくりに用いる人体に関する資料や模型を、まとめて「積読ホルダー」に置く使い方には「なるほど!」と思いました。本を置くスペースとしては三段ですが、一番上(天板)は天井がないので、模型なども置けます。すぐ手に取れるように仕事道具をまとめておくというのは、とてもいいアイデアだなと感じました。
他には、ゲームのソフトやコントローラーを収納している声もありました。もちろん、本のために作った商品ではありますが、自分に合った形で使っていただけるのは、ありがたいなと思っています。
本以外の商品が、本を読む循環をつくる

――今後も、本を読むときに感じる課題から、新しい商品を作っていく予定はありますか。
高橋:ありがたいことに、書店さんからも「次の商品はないんですか」と声をかけていただいています。そこで、第二弾として『集中を支えるクッション』という商品を作りました。
読書に限りませんが、姿勢が崩れると、やる気や集中力も落ちてしまいますよね。寝転がりながらテレビを見ていると、そのまま寝てしまうこともあります。でも、姿勢を正して見ていれば、たぶん寝ないと思うんです。
本も同じで、いい姿勢で読んでいれば、最後まで読み切れるかもしれない。でも、だんだん体勢が崩れてくると、眠くなったり、読むのをやめたりしてしまう。そこで、読書や勉強をするときの姿勢を支える、高反発のクッションを作りました。こちらは、7月末まで『Makuake』を通じて販売しており、9月末頃から書店さんでの一般販売へと展開できたらいいなと考えています。


――先ほど実際に座らせてもらったのですが、自然と背筋が伸びますね。しかも、軽くて小さくて持ち運びやすいのもいいです。図書館やカフェの椅子が合わないなというときにも重宝しそうです。
高橋:そうなんです。「積読ホルダー」が、本を目に入る場所に置き、手に取るまでのハードルを下げる商品だとすれば、このクッションは、本を読むための環境を整える商品です。本を手に取るところから、読み続けるところまで。読書にまつわる小さなストレスを、少しずつ減らしていきたいと思っています。

――「積読ホルダー」自体も、今後さらに展開していくのでしょうか。
高橋:今年6月には、限定色のライトブルーを発売しました。個人的には、既存のブラックとライトブルーを1台ずつ購入して、例えば棚板をテレコにして組み立てるとチョコミントのアイスみたいなカラーリングの積読ホルダーができあがり、かわいいと思っています。今後も定番商品として、新たなカラーを展開しながら、より幅広い世代の方にも手に取っていただけたらと考えています。
――「積読ホルダー」や「集中を支えるクッション」のように、出版社が本そのものではない商品を作ることには、どんな意味があるのでしょうか。
高橋:実際に、書店さんから本以外の商品を求める声は大きくなっていますし、我々としても、新しいプロダクトやサービスを生み出すことには挑戦していきたいと思っています。
それも、せっかくなら書店さんに応援してもらえて、本を読む方の役に立てるものがいいなと。商品そのものが売れることも大事ですが、その商品が売れることで本も売れるようになったら、最高ですね。
――それは、紙の本が売れにくくなっているという時代の流れからでしょうか?
高橋:もちろん、そうした背景もあると感じています。たしかに電子書籍は便利ですが、個人的には、紙の本はこれからもなくならないんじゃないかと思うんです。音楽配信が主流になっても、レコードやCDがほしいという人がいなくならないように。本を紙で読みたい、本を物体として所持したいという欲求はなくならないと思います。やっぱり、紙の本には、めくる触感や音、紙の匂いなど、いくつもの感覚を同時に使う特別な体感がありますから。だからこそ、「積読ホルダー」を使って積読を少しずつ消化し、読み終わったら新しい本を買う。その循環に貢献できればと思っています。
■販売情報
「積読ホルダー」
価格:5,478円(税込)
商品サイズ(組立後):幅200mm×奥行150mm×高さ310mm、重量2.2kg
本体色:ライトブルー(限定1,500個)、ブラック、グレージュ
販売店舗:全国の書店、Amazon、クロスメディアSHOP
販売元:クロスメディア・パブリッシング
























