2020年を生きた少年少女たちへーー辻村深月『この夏の星を見る』が描いたコロナ禍の繋がり

辻村深月『この夏の星を見る』を読む

 2020年1月16日、すでに世界で流行していた新型コロナウィルスの感染者が、日本で初めて確認された。以後の経緯は、みんな覚えていることだろう。感染が拡大し、マスクは品薄になり、東京オリンピックは延期された。そして4月7日に安倍首相が、7都道県を対象にした緊急事態宣言を出し、16日に対象を全国に拡大。社会は未曽有の事態に突入した。辻村深月の『この夏の星を見る』は、その2020年を生きた少年少女たちを主人公にした、心に響く青春小説である。

 物語の主人公は三人。順番に紹介していこう。まず最初は、茨城県立砂浦第三高校の二年生・渓本亜沙だ。天文学部に所属している亜紗だが、感染予防のための休校で3月と4月がごそっと消え、5月になっても限られた登校日にしか学校に行っていない。6月になって少し落ち着いたが、部活動も以前のように行えないでいた。部長で3年の山崎春菜と、同級生の飯塚凛久(ちなみに砂浦第三高校は5年前まで女子高であり、男子生徒は12人しかいない)と、今年の活動予定を考える亜紗。そんな3人を、いい意味で放任主義な顧問の綿引邦広先生が見守っている。

 次は、東京都の渋谷区立ひばり森中学校に入学した安藤真宙だ。小学生のときはサッカーをしていたが、背が伸びず、限界を感じて止めてしまった。また、なんとなく選んだ中学校だが、一年生の男子が自分ひとりであり、周囲からは気を使われている。それやこれやで真宙は、休校を歓迎していた。再開された学校に行くのが、憂鬱でしかたがない。ところがクラスの学級委員で、理科部に所属する中井天音に声をかけられたことから、彼の日常が変わっていく。彼女と一緒にいたとき、サッカーをやっていたときの4つ年上の友人・柳数生と再会。東京都立御崎台高校に通う柳は、物理部に所属していた。柳の話を聞いて、心が動いた真宙は、天音に誘われるまま理科部に入るのだった。

 最後は、長崎県の五島列島の中でも比較的大きい島で暮らす佐々野円華だ。長崎県立泉高校の二年生の円華は、親友の小春と共に、吹奏楽部に所属している。だが家が旅館で、コロナでも客を受け入れているため、小春に距離を置かれてしまう。そんな円華に声をかけたのが、離島ステイという留学制度で泉高校に通う、野球部の武藤柊だ。武藤に誘われ、再開された五島天文台に行った円華は、そこでやはり島への留学生で小山友悟や、天文台館長の才津勇作と知り合い、少し気持ちが上向くのだった。

 主人公たちの説明だけで字数を取ってしまったが、これでもかなりいろいろ削ぎ落している。本書はとにかく登場人物が多いのだ。その誰もが魅力的である。新型コロナウィルスに対する政府や大人たちの対応に振り回される多数の少年少女たちの、心の中にある苦しみや葛藤が、リアルに表現されているのだ。主人公たちと同年代の人なら、読んでいて何度も頷いてしまうことだろう。

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