『Re:ゼロから始める異世界生活』絶望を乗り越えて人々を救うナツキ・スバルに抱く共感と尊敬

『Re:ゼロ』熱い支持の理由

 出会う美少女のことごとくから関心を持たれるなんて、実に羨ましいと思うかというと、そんなナツキ・スバルを「死に戻り」の境遇へと引きずり込んだ「嫉妬の魔女」の執心ぶりには、ありがた迷惑なところもある。「嫉妬の魔女」はナツキ・スバルを心底から愛しているらしいが、そのきっかけは判然としない。ナツキ・スバルが異世界に召喚されたこと自体にも、目的を達成させる運命のようなものは見えない。

 だからこそ、ナツキ・スバルが体を痛め、心を削りどれだけ死に戻っても、取り戻せないことがあると分かって絶望に苛まれても、立ち上がってエミリアを救いレムを救いベアトリスを救おうする気持ちが意味を持つ。引きこもりだったナツキ・スバルでも、誰かを救えると分かれば体を投げ出そうとするその姿勢に触れることで、読者は自分にもまだやれることはあるのかもしれないと感じ取れる。そこに『Re:ゼロから始める異世界生活』への共感が生まれる。

 多彩なキャラクターも読みどころのひとつ。珍妙なしゃべり方で道化を気取りながらも、陰謀を巡らせてナツキ・スバルを窮地に追い込むロズワールや、圧倒的な強さで迫ってくるエルザは言うに及ばず、エミリアが挑む王選に候補として並んだ少女たちや付き従う者たちの一人ひとりに個性があって、それぞれの素性や感情を知りたくなる。敵として立ちふさがる魔女教の大罪司教たちも、エキドナをはじめとする大罪の魔女たちも、権能を振るい異能を繰り出して超常的な展開を楽しませてくれる。

 水門都市プリステラからプレアデス監視塔を経てヴォラキア帝国へと飛び進んで行くストーリーでキャラクターはさらに増え、ナツキ・スバルにも果てしないほどの危機が迫るが、そうした展開を、どれだけの苦しみを得て、どれだけの絶望に苛まれても絶対に乗り越えてくれると信じて読んでいけるところに、長く続く物語から離れられない理由がある。

 願うならそうした物語が、第2シーズンまで制作され、ベアトリスが書庫を出てエミリアが聖域を解放した第四章の終わりまで描かれたアニメシリーズに続編が作られ、多彩なキャラクターたちによるドラマを映像によって見せて欲しい。そう思っているファンも多そうだ。

 

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