中村うさぎ、ラノベ黎明期から様変わり「異世界転生」氾濫に喝「テンプレ小説ばかり、書いてて恥ずかしくないのかな」

中村うさぎインタビュー

あらゆる大手出版社から刊行され、巨大な市場に成長しているライトノベル。メディアミックスも好調で、その勢いはとどまるところを知らない。そんなライトノベルの黎明期はいったいどのようなものだったのか。黎明期にラノベ作家としても活躍をしていた中村うさぎに今だからこそ話せるデビューまでの経緯と、当時のライトノベル界の話をじっくりとうかがった。

売れっ子ライトノベル作家であった中村うさぎ

 中村といえば自身の買い物依存症から、美容整形、ホストクラブ、そして風俗とあらゆるジャンルを網羅したエッセイストとして名高く、マツコ・デラックスを発掘して芸能界進出へ導いたことでも知られるが、1990年代には『ゴクドーくん漫遊記』を筆頭にヒットを連発していた売れっ子ライトノベル作家であった。その後の活躍が有名になりすぎているため、ライトノベル作家時代を知る人は少ないかもしれない。

中村うさぎの小説家デビュー作『ゴクドーくん漫遊記』(当初は『極道くん漫遊記』)は、1990年代を代表するライトノベルの一つである。身勝手でわがままな主人公、ゴクドー・ユーコット・キカンスキーが仲間たちと繰り広げる痛快な冒険活劇。

       

中村うさぎが文章を書き始めたきっかけ

――中村うさぎ先生はライトノベル作家としてデビューする前に、OLなど様々な仕事を経験されているそうですね。

中村:大学を卒業してから、大阪にある住友グループの繊維会社で1年半ほどOLをやっていました。そもそもOLを選んだのは、私は特別な才能もないと思っていたから。だけど、入社してしばらく経つと、明らかに自分に向いていない仕事だと思い始めたんです。当時は男女雇用機会均等法もなくて、女性は同期の男性より給料が低い。それにOLなんていつか結婚してやめちゃうんだろ、という雰囲気が社内にあったのです。危機感を覚えて、手に職をつけようと考えました。

――その時に選んだのが、文章を書く仕事だったということでしょうか。

中村:高校時代の友達と話をしたら、「あなたは作文の点数が高かったし、文章書く仕事がいいんじゃない?」と言われたんです。ちょうどその友達が広告代理店に勤めていたので、コピーライターという仕事を教えてもらいました。話を聞くと文章量も多くないし、私でもできそうだと思ったのです。

――ご友人が中村先生を文章の世界に導いたキーパーソンなのですね。

中村:仕事の仕方は通信教育で学んで面接を受けたのですが、プロダクションに一発で受かったんですよ。バブル景気が到来しつつあり、広告業界でコピーライターの需要が高まっていたためでしょうね。就職後、5~6年はコピーライターを続けていました。

――順風満帆ですね。

中村:ところが、父の転勤に合わせて上京することになり、職場を離れることになったのです。再就職先を探していたら、運悪くコピーライターが余り始めたタイミングでした。糸井重里さんが大スターみたいな扱いで、コピーライターを目指す人も増えていたんですよ。そんなわけで再就職はかなわず、フリーランスになったのです。

『ショッピングの女王』はエッセイストとしての中村うさぎのイメージを確立した代表作だが、90年代の中村といえばファンタジー小説のイメージが強かった。

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