『ベルセルク』はかくも愛された作品だったーー宮台真司ら、識者9人それぞれの視点

宮台真司らが読み解く『ベルセルク』

 少し長くなったので、以下は簡単に触れよう。映画史研究家の渡邉大輔は「テレビアニメ『ベルセルク』とポスト・レイヤーの美学」で、アニメの『ベルセルク』で使われた3DCG技術が、いかに発展したかを、現代アニメの状況を含めて説明している。暗黒批評家・後藤護の「黒い脳髄、仮面のエロス、手の魔法」は、「再生の塔」の地下空間・仮面に隠されたグリフィスの顔・「手」のモチーフについて、縦横無尽に語っている。博覧強記とはこのことか。フリーライターのしげるは「フィクションと現実との境界線に突き立つ『ドラゴンころし』」で、『ベルセルク』の「黄金時代篇」は、中世・近世ヨーロッパ史の影が濃いと指摘。そこから当時の実際の傭兵に触れながら、グリフィスの野望が荒唐無稽と言い切れないと書く。

 そして漫画ライターのちゃんめいは「後追い世代も魅了した『黄金世代篇』の輝き」で、遅れてきた読者が、いかに『ベルセルク』に夢中になっていったかを、楽しく語っている。私はリアルタイムで読んできた世代なので、後追い世代の作品の受け止め方などが分かり、とても興味深かった。

 本書にはさらに、成馬零一×しげる×ちゃんめいによる「『ベルセルク』座談会」も収録されている。三人とも『ベルセルク』が大好きだという気持ちが伝わってきて、読んでいるこちらまで嬉しくなった。もちろん他の人たちの文章からも、作品が好きだという気持ちが溢れている。とにかく多くの読者に愛された作品なのだ。

 周知のように三浦建太郎は、2021年に死去した。単行本41巻収録の「朝露の涙」が、直接ペン入れした最後の原稿となり、このまま未完になるかと思われた。しかし生前の三浦から今後の展開を聞いていた親友の漫画家・森恒二が監修、「スタジオ我画」のスタッフの執筆により、連載が継続されている。ストーリー漫画が、このような形で継続されるのは、きわめて稀なことだ。本書の中で、何人もが『ベルセルク』の今後を予想しているが、それだけ物語の完結を待望しているということ。本書によって、より理解の深まった作品の行方を、ドキドキしながら見守っているのである。

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