ラムだけじゃない『うる星やつら』魅惑の異星人 ラムの幼なじみ・ランの幸せのかたち
距離を近づけていくランとレイ
レイが食いしん坊すぎることもあってラムはレイに幻滅し別れたのだが、ランの中でレイの評価が下がることはない。食いしん坊で地球の言葉をほとんど話さないレイの性格や嗜好を理解したうえで、長い間、一途に恋をしているのだ。ランがレイのためにけなげに頑張る姿を見て「いじらしいっちゃ」とラムが感激するくだりもある。
ランはぶりっ子と復讐の鬼というギャップのある性格でありながら、この一途さはどのようなときも変わらない。
終盤、未来のドアがたくさん現れるパラレルワールドのエピソードでは、レイとランが結婚をして幸せになる未来も、可能性があるものとして描かれた。最終回ではあたるとラムの危機が描かれているので見逃しがちだが、ラムを救うためにレギュラーメンバー、準レギュラーメンバーが大勢で押しかけ、ランの宇宙船を無理矢理使う場面がある。
ランの宇宙船では、ちょうどランがレイに食事を振る舞っていた。それまでレイがランの宇宙船に来たのは、偶然たどり着いたときだけである。この終盤のエピソードはそのときとは異なり、レイはランに会うために自らランの住まいである宇宙船に来ているのだ。
食べものをもらうことが目的だったとしても、これまで外でのデートばかりだったふたりにとって大きな変化が訪れたように見える。
ランの幸せのかたち
『うる星やつら』はランを通してひとつの幸せの形態を表現する。
ラムをはじめとする友人に対しては、二重人格の裏の部分をあらわにして河内弁のような言葉で怒ることもあるランだが、その性格は幼少期のつらい経験がもとになっていて、本来は好きな人を一途に想う少女なのだ。
自分の作ったものをレイが「おいしい」と言ってくれた瞬間、ランはいつもとても幸せそうな表情になる。自分の好きな人が、自分がした何かによって喜んでくれることに幸せを感じる。これこそがラン最大の魅力であり、読者にとっても普遍性のある幸福のかたちなのではないだろうか。
レイがランと結ばれ、ランに希望ある未来が訪れることを願ってやまない。