ラムだけじゃない『うる星やつら』魅惑の異星人 ラムの幼なじみ・ランの幸せのかたち

 『うる星やつら』と聞いて多くの人が連想するのが、トラ柄のビキニを着たヒロイン・ラムだろう。「~だっちゃ」という口調も可愛らしく、その絶大な人気は連載開始から44年経った今も続いている稀有なヒロインである。

 一方で『うる星やつら』にはほかにも個性的な魅力あふれる女性キャラがたくさん登場する。その中のひとりがラムの幼なじみのランだ。まわりから注目を集めるほどの美少女であるランは、ラムと異なり空は飛べず、主人公のあたると同じ高校に編入したため、制服を着ている描写も多く序盤では周囲に人間だと嘘をついている。

 いわゆる「ぶりっ子」のランだが、地球へ来た目的は、ラムに復讐するためだった。

復讐と友情

 可愛いランは、すぐに女好きのあたるがアプローチする女性になる。これはランの思うつぼだった。

 彼女は片思いしていたレイをラムに奪われた経験があり、婚約したふたりを見てあきらめようとしたが、ラムがレイをふって地球で新しい男(あたる)に恋をしていると聞き怒りがおさえきれず、ラムからあたるを奪うために地球に来たのだ。

 ランが怒りをあらわにするとき、彼女は豹変する。激しい感情は表情だけではなく、口調も変化させる。大阪の河内弁に近い言葉を発するようになる。後にわかることだが、これはランの厳しい母親の言葉遣いでもある。

 作中で徐々に明らかになるが、ランは子どものころ、おねしょをした濡れ衣を着せられ母から体罰を受けたり、先生へのいやがらせにつきあわされ酷い目に遭ったりしている。

 復讐の鬼となったランは、地球でラムにいやがらせを始める。客観的に見るとランが復讐することになった理由は納得できる。一方でラン自身も物語の中盤で気づくのだが、ラムは天然キャラなのでランを傷つけた自覚がない。

 ランを苦手だと思いながらも友だちとして認めていて、ランも復讐の標的であるラムを頼ることがあり、お互い友だちだと認め合っているのがわかる場面が数多く存在している。たとえば地球に宇宙船を置きその中でひとり暮らしをするランが風邪をひいたエピソードでは、ランは遠回しな表現でラムに看病を求め、ラムもそれに感じ取って、できる限りの看病をしようとする。

ラムの元婚約者・レイを想うランの一途さ

 『うる星やつら』のランに関する部分で注目したいのは、ラムとランの友情だけではなく、ラムの元婚約者で今もラムを想っているレイとランの距離感が、物語が進むにつれてどんどんと近づいていくことだ。

 レイの最大の特徴は『うる星やつら』でいちばんと言えるほどイケメンなのに、食いしん坊であることだ。それを知っているランは、地球の高校でレイに再会したとき、すぐにお弁当を作り持っていく。この後、レイの登場するエピソードにはかならずランも出てくるようになり、彼女はたい焼きやおにぎりを大量に作りレイに持っていく。

 ランはデートだと呼んでいるが餌付けに近い行動である。だがランの想いが伝わっているのかいないのか、レイとランが会う回数は増え、飛べないランがレイのために作った食べものの重さで転落しそうになったときは、おにぎりより先にランを助けている。

 これは食べものを何よりも優先してきたレイとしては信じられない行動で、その場にいたあたるとラムを驚かせる。ギャグテイストをふんだんに盛り込んだ漫画なので、もちろんオチがあるのだが、それを踏まえてもレイの中でランの存在が大きくなっていることを示すエピソードではないだろうか。

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