『鋼の錬金術師』荒川弘、待望の新連載! 『黄泉のツガイ』を3つのキーワードから紐解く

荒川弘、待望の新連載を読む

 『鋼の錬金術師』や『銀の匙』などで知られる荒川弘先生の新連載『黄泉のツガイ』が、12月10日発売の「月刊少年ガンガン」1月号よりスタートした。荒川弘先生が同誌に新連載をスタートさせるのはなんと約11年ぶり。また、今年は『鋼の錬金術師』20周年というアニバーサリーイヤーでもあるため、荒川弘先生の”「月刊少年ガンガン」帰還”は、『鋼の錬金術師』はファンはもちろん漫画ファンにとっては最高の出来事なのではないだろうか。(参考:『鋼の錬金術師』が達成した3つの偉業ーーワールドワイドな熱狂を振り返る

*付録は新連載スタート記念『黄泉のツガイ』特製クリアファイル

 表紙でこちらを射抜くような強い眼差しを向ける主人公・ユルがとにかく印象的だが、本編も1話から早々に衝撃的な展開を見せ、表紙同様に読者の心を強く射抜いた。今回は、そんな大注目の新連載『黄泉のツガイ』において欠かせない3つのキーワードを紐解いていきたい。

意図的に近代文明から隔絶した? 謎だらけの”村”

 『黄泉のツガイ』とは、山奥の小さな村を舞台に主人公・ユルと村の奥に幽閉されている双子の妹・アサを巡り、兄妹、そして村に隠された秘密に迫る物語だ。

 ユルが住む村は、山に沿って重なるように民家が建ち、道には素朴な石畳が広がり、その姿はどこか中国の農村を思わせるような不思議な雰囲気を醸し出している。また、作中でユルたちは、風の音で天候を予測したり、農業や狩猟によって自給自足の生活を営んでおり、まさにその様子は人と自然が調和する村。だが、そんな村で一際違和感を放つのが「左右様」と呼ばれる対になった石像だ。村の人々が守り神として信仰する「左右様」だが、この存在こそが1話から物語を大きく動かしていく。さらに、侵入者によって村が襲われた際には、村民の一部は文明の機器である携帯電話、そして拳銃を流暢に使いこなすシーンが描かれており、どこか意図的にこの村を近代文明から隔絶しているような、得体の知れない不気味さが漂っている。

荒川弘先生が描く”兄妹”の物語

 先述の通り、『黄泉のツガイ』とは主人公・ユルと双子の妹・アサを巡り、2人の兄妹関係と村の秘密に迫る物語だ。この「兄妹」が本作の物語のカギを握る重要な存在であることは間違いないが、荒川弘先生はこれまでにも”きょうだい”の物語を手掛けてきた。

 『鋼の錬金術師』は、人体錬成と呼ばれる禁忌を冒した兄のエドワード・エルリック、そして弟のアルフォンス・エルリックが全てを取り戻すために「賢者の石」を求めて旅をする物語で、このエルリック兄弟を通して”兄弟の揺るぎない絆”を描いた。北海道の農業高等学校を舞台にした青春物語『銀の匙 Silver Spoon』では、「秀才」タイプの八軒勇吾に対して、兄である八軒慎吾を要領よく物事をこなす「天才」として描き、兄弟に対して叶わないと嘆きながらも”憧れずにはいられない腐れ縁”のようなユニークな関係性を表現した。

 『黄泉のツガイ』で描くのは「兄妹」の物語。1話では、愛憎を感じさせるような緊迫した様子が描かれていたがユルとアサの関係性、そして「兄妹」を通して描かれる物語に今後も要注目だ。

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