『呪術廻戦』パンダ先輩、『らんま』玄馬に『BEASTARS』ゴウヒン……漫画のキャラになぜ“パンダ”が選ばれる?
上野動物園で双子のジャイアントパンダが生まれた。お母さんはパンダ界のスター、シンシンだ。誕生して約一週間が経ち、母子ともに健康なのだそう。公開された赤ちゃんの顔が笑っていて可愛い。パンダってなんでこんなに可愛いのだろう?
先日最終回を迎えたドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』で岡田将生演じた三番目の夫もパンダが大好きで、何かとパンダの動画を観ていた。彼の名前も、慎森(しんしん)。パンダ推しが過ぎる。漫画界でも、最近は大人気作『呪術廻戦』のパンダ先輩しかり、こういったサブカルチャーの中でのパンダの存在感の強さを感じて仕方ない。ただ、なぜパンダなのだろう。それが単に“可愛い”からだけなのだろうか。
例えば、『鋼の錬金術師』に登場する中国系のメイ・チャンが連れているシャオメイというパンダのキャラクター。シャオメイは病気で体が大きくなれなかったジャイアントパンダの子供であり、メイ・チャンの肩に乗るようなサイズ感でもあるためマスコット的な印象が強い。このように、中国系の登場人物が一緒にいる愛らしい動物キャラに、中国にのみ生息すると言われる、いわば国の象徴的なパンダが起用されることは非常に多い。しかし、シャオメイは単なる“可愛いパンダのマスコット”にとどまらず、チャン・メイのサイドキックとして彼女の戦闘をアシストする。
同じ文脈で(中身おっさんだけど)パンダキャラとなった『らんま1/2』のらんまの父、早乙女玄馬。「呪泉郷」の熊猫溺泉に落ちたことで水をかぶるとパンダになる体質になるわけだが、ここでなぜ“パンダ”なのか、という疑問も中国で修行をしていたから、という理由に尽きる。
ただ、その“修行地”というのが結構重要で、中国は様々な武術発祥の地でもある。特に四川を代表する峨眉武術と繋がりの強い、四川盆地の南西はずれに位置する峨眉山は何を隠そう、かつてパンダが生息していた地域だ。ドリーム・ワークスのアニメ映画『カンフー・パンダ』が物語るように、中国だからパンダという文脈以上に、武術×パンダという意味合いもまた、パンダキャラクターを捉える上で重要なのである。シャンメイも玄馬も、そういった意味で“戦うパンダ”だ。そして、戦う動物キャラにパンダが選ばれるのは、彼らの生態を考えても非常に合理的だ。
パンダはふっくらまんまるの愛らしいフォルムに反し、主食の99%が竹ということもあって、実は筋肉ムキムキ。高タンパク質&低カロリーな食事に加え、竹を割る動作で日常から筋トレしているようなものだ。そして、普段ゆったりしているような印象に対し、実は凶暴。天敵との遭遇など、いざという時の逃げ足は速いと言われている。披露する機会こそ少ないが、実はマッスルボディに加え俊敏性も兼ね備えているというコワモテな一面がある。だからこそ、中国系のキャラという文脈をさておいても、格闘派の動物にパンダは選ばれやすい。
『呪術廻戦』のパンダもそうだ。彼は厳密に言えば呪骸という、夜蛾学長が彼の術式で生み出した呪いを内包し、操作できる無生物。夜蛾学長がカワイイもの好きだからパンダ、というチョイスも頷けるが、その後鍛錬され、立派な呪術師に育て上げられたパンダの術式が基本的に近接型の肉弾戦というのもパンダをパンダたらしめる要素である。一方で、とはいえ生物的なパンダではない(無生物)ことを象徴するように、好きな食べ物がカルパス(肉)で、嫌いなのが笹という対極的な設定があって面白い。まさに“パンダは、パンダじゃない”のだ!