【漫画】出かける前にアイロンの電源を切っただろうかーー70年代の“トラウマ少女漫画”が怖すぎる

70年代の“トラウマ少女漫画”が怖すぎる

 いちばん恐ろしいのは、人間――。人の心理に訴え、体の芯から寒気がするような作品で、70年代の少年少女にトラウマを植え付けてきた作家・直野祥子。その作品集『毛糸のズボン ——直野祥子トラウマ少女漫画全集』(ちくま文庫)が2月10日、発売される。

 初めての家族旅行に浮かれるさち子は、その道中で、スカートにかけたアイロンの電源を切り忘れたのではと不安に思い始める。旅行先の九州に向かう船のなかでも憂鬱さがつのるなかで、船内である老人と出会いーー。

 『毛糸のズボン』に収録された作品のひとつで、「なかよし」1971年10月号に掲載された短編『はじめての家族旅行』は、恐ろしい怪物も幽霊も、超常現象も登場しないが、誰もが思い当たる不安を増幅し、じわじわと心を侵食するような名作だ。人によっては新たなトラウマになり、人によっては過去のトラウマを呼び起こすかもしれない本作。底冷えするような心理的な恐怖を感じたい人は、心して読んでほしい。

『毛糸のズボン』より、「はじめての家族旅行」を読む

『毛糸のズボン——直野祥子トラウマ少女漫画全集』(ちくま文庫)

【目次】
マリはだれの子
毛糸のズボン
おつたさま
宿題
ひも
かくれんぼ
復讐
こじきの死
はじめての家族旅行
首かざり

シャイアンの大わし
血ぞめの日記が空を舞う
へび神さま

自作解説――漫画と私

【著者プロフィール】
直野 祥子(なおの・よしこ)
漫画家、イラストレーター。神戸・六甲で生まれ、夙川で育つ。1968年、ガロの新人募集コーナーで「実験」が入選し、漫画家としてデビュー。1971年~1973年にかけて少女漫画雑誌「なかよし」「少女フレンド」誌上にて、人間心理をえぐるような異色のサスペンス作品の数々を発表、そのショッキングな内容は当時の読者に多大なトラウマを植え付けた。以降はビッグコミックオリジナルや女性セブン、女性自身などで活躍を続けるも平成7年の阪神淡路大震災で被災し、初期の原稿はほぼ消失。2005年、生まれ育った昭和30年代の夙川での家族の暮らしを絵日記として記した『夙川ひだまり日記』を小学館スクウェアより出版。

カバーデザイン:川名潤
発売日:2月10日 定価:1,100円(10%税込)
ISBN:978-4-480-44009-9 判型:文庫判
ページ数:336頁

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