安堂ホセ × 伊藤亜和『DTOPIA』対談 「許す必要がないと思っていた人物でも、小説で書いてみたら許せることもある」

作家・安堂ホセと文筆家・伊藤亜和の対談トークショーが東京・渋谷区の青山ブックセンター本店で開催された。今年、芥川賞を受賞した安堂ホセの小説『DTOPIA』(河出書房新社)の刊行記念イベントで、同作の魅力と執筆に込めた思い、両者の創作に対する考え方について語り合った。
『DTOPIA』は、恋愛リアリティショー「DTOPIA」を舞台に繰り広げられる新感覚小説。ミスユニバースを巡って、Mr.LA、Mr.ロンドン、Mr.東京など10人の男たちが争うというストーリーとなっている。
対談相手の伊藤亜和は、昨年エッセイ集『存在の耐えられない愛おしさ』(KADOKAWA)、『アワヨンベは大丈夫』(晶文社)を刊行し、家族や友人とのエピソードを独自の感性と温かなまなざしで綴っている。今、文芸の最前線で活躍するお二人が対談する模様を、本記事では抜粋・編集してお届けしたい。(篠原諄也)
noteの記事をきっかけに知り合って

安堂:最初に伊藤さんのことを知ったのはnoteだったんです。
伊藤:noteというプラットフォームがあって、そこでブログのようなものを書き始めたのが、私の(執筆活動の)最初でした。

安堂:僕が2年前に初の小説『ジャクソンひとり』を刊行したときに、伊藤さんが写真つきでnoteを書いてくれたんですよね。それで他の記事も読んでみると、こんな面白い日記を書いている人がいるんだと思って。その頃から知ってはいたんですけど、特に連絡はしてなかったですよね。
伊藤:そう、静かに相互フォロー。
安堂:伊藤さんのnote記事「パパと私」がバズる前からね。
伊藤:そうですね。私も安堂さんを芥川賞を取る前から知ってました……みたいな(笑)。私は全然小説を読まないので、いつも最初の情報は(文学好きの)母からくるんですよ。「『ジャクソンひとり』が面白いから読んでみたら」と言われたんです。私は当時、noteは書いていたけど、作家として生きていくとか、本を出すとか、全然決まっていなかった頃でした。
安堂:いつかは本を出したいっていうのはあったんですか?
伊藤:いや、全然なかったんです。noteもなんとなく書いてました。(安堂さんは)今となっては書いているもののレベルが私よりずっと高いからあれですけど、最初は若干、対抗意識があったんです。
安堂:いやいや、そんなの考えることがあるんだ(笑)。もっとギラギラ系の人だったらわかるけど、意外と対抗意識があるんですね。
伊藤:めちゃくちゃあります。
安堂:今も誰かに対抗意識はあるんですか?
伊藤:やっぱり同時期に書き始めた人とか、Xで毎日巡回して見てる。
安堂:まじで(笑)。意外ですね。
『DTOPIA』は交響曲のような作品

伊藤:安堂さんの『DTOPIA』を拝読しました。私は感想を言うのがすごく苦手なんですけど、交響曲みたいだなと思いました。
安堂:嬉しい。
伊藤:最初にバーンと始まって、グーと抑鬱のような状態が続いて、最後にハー!となるみたいな……感想が言えない人の典型みたいになってる。
安堂:いや、すごくよく分かります。
伊藤:最後にすべてが浄化されていく感じがすごく素晴らしいなと思いました。
安堂:交響曲というと、伊藤さんは音楽から得た感性が作品に出たりするんですか? 音楽がお好きなんですよね。

伊藤:好きですね。小さい頃からよく歌ったりしていて。だから感性の基準が音楽によってるんだと思います。私が勝手に思ってることだけど、『DTOPIA』はひとつの曲として成立している。
安堂:確かにいろんな人が出てきて、賑やかな感じはあるかもしれないですね。この人はこう言って、あの人はああ言って、みたいな。
伊藤:私はニコ生世代なの。……全然関係ない話してると思うでしょ? でもニコ生でボーカロイドの曲が好きでよく聞いていて。わーってなって、ごちゃごちゃってなって、最後に大合唱になるんですよ。
安堂:ボーカロイドってそういう感じなんですね。
伊藤:作曲した人にもよるんだけど。私が聞いていた頃は、歌い手が何人もいて大合唱する曲が流行っていて。そういう雰囲気が『DTOPIA』に感じられる。すごいなと思いました。