『ドカベン』ファンを泣かせた”感動の名場面”とは? プレイに込められたドラマ3選
弁慶高校、武蔵坊数馬の執念で勝利
山田太郎が2年生の夏。2回戦で武蔵坊数馬率いる岩手県の弁慶高校と対戦する。武蔵坊は病に倒れた岩鬼の母や、肩の故障で苦しんだ江川学院の中を気功のような不思議な力で治すなどしており、ただならぬ雰囲気を漂わせていた。
試合前、弁慶高校のエース義経はテレビのインタビューで「明訓高校戦の第一球はど真ん中のストレート」と予告する。その様子を見た土井垣監督は「岩鬼が悪球打ちだということをわかっていての予告だぜ」と笑う。
土井垣は「山田を1番にすればプレイボールホームランが狙える」と踏み、これまで4番を打ってきた山田を1番に、岩鬼を4番に打順を変更する。そして狙い通り、初回に山田がホームランを放ち、1点を先制した。
しかしその後は「出る人と返す人」が逆になったことや、もう1人のキーマン、殿馬を武蔵坊が徹底マークしたため、明訓は得点を取ることが出来ない。それでもエース里中の好投で1点を守り、明訓が逃げ切るものと思われた。
ところが7回裏、ランナー1塁で武蔵坊を迎えた場面、敬遠のため里中が無造作に投げた高めのボール球を武蔵坊が捉え、逆転ホームランを放つ。明訓は一転してピンチに陥ってしまった。しかし9回表、山田が2本目のホームランを放ち同点に追いついた。
その裏の弁慶高校の攻撃。1塁にランナー義経を置き、武蔵坊がホームラン性の打球を放つ。サヨナラホームランと思われた瞬間、殿馬がジャンプしてグラブに当て阻止し、内野安打にする。義経と武蔵坊以外にはほとんど打たれていない里中だけに、延長に入るものと思われた。
続く安宅の打球はセンターへ抜けようかという打球。セカンドの殿馬が横っ飛びでキャッチすると、バックトスで二塁へ送球しアウト。ボールを受けたショートの石毛が併殺のために一塁にボールを投げると、一塁ランナー武蔵坊の顔面に直撃し、併殺が阻止される。その間に二塁ランナーの義経は、三塁を蹴ってホームへ向かう。
跳ね返ったボールをキャッチした殿馬が二塁からホームに送球するも、少し右にそれる。上手くキャッチした山田が義経にタッチに行くと、高々とジャンプする「八艘飛び」でタッチをかいくぐり、ホームイン。無敗の明訓高校がついに敗れた。そして顔に打球を受けた武蔵坊は立ち往生し、その後グラウンドに倒れた。(40巻)
武蔵坊の気迫と野球人生をかけたプレーは、まさに名場面だ。そして山田が入部後無敗だった明訓高校が唯一敗れたことも、人々の記憶に残っている。
ファンの心に刻まれる『ドカベン』
取り上げた場面以外にも、様々な野球を通じた感動シーンが盛り込まれていた『ドカベン』。その描写は、現在も多くの野球ファンの心に刻まれている。