“NINJA”の逆輸入? 『NARUTO』が海外で人気を博した理由とは

なぜ『NARUTO』は海外で人気を博したのか

『NARUTO』に見る日本文化の特徴

 『NARUTO』は、ある意味西洋的な概念となった「NINJA」を逆輸入した作品と言える。作者の岸本氏自身はそれを意識しなかっただろうが、無意識にそれが行われていた点がむしろユニークで興味深い点と言えるかもしれない。

 日本は、あらゆる文化をとりこんでしまう。クリスマスを祝った数日後に神社にお参りに行くことに違和感を抱かない国民性だ。なんでも取り込むミクスチャー性が日本文化の特色であり、『NARUTO』という作品には、そんなミクスチャー感が色濃く出ており、海外で発展したNINJAカルチャーすら、無意識に取り込んでしまったわけだ。

 批評家の横山宏介氏は、そんな『NARUTO』に、日本のポップカルチャーの在り方の典型的な例をみている。

「そこで描かれる「忍び」は日本的なモチーフでありながら、史実の忍者とはむしろ関係がありません。それは単に、忍者は火を吹かないし分身もしない、という意味では無く、『ナルト』における忍者の造形が、「チャクラ」や「フォーマンセル」といった用語、あるいは色も形も様々な髪と瞳(ナルトは金髪碧眼です)や洋服に代表されるとおり、徹底して多(無)国籍的であるということです。つまり同作では、古今東西の要素の「外付け」が「忍び」=日本的なものに回収されるのです。『NARUTO』は過剰な「外付け」自体を「日本」の個性として提示し、結果「クールジャパン」の先駆けとして、世界中で読まれることになりました」(https://school.genron.co.jp/works/critics/2015/students/yokoyama/703/

 横山氏は「外付け」の魅力を持った作品の後継作品として、『僕のヒーローアカデミア』に言及している。こちらの作品は、「NINJA」ではなく、アメコミのスーパーヒーロー的な存在を日本国内で展開させた作品だ。日本を舞台に、日本人の登場人物にアメコミ的活躍をさせるというこの漫画は、文化のミクスチャー性を感じさせ、物語の構成やキャラクターの関係性の類似以上に『NARUTO』の精神を継承していると感じさせる作品である。

 こうしたミクスチャー性は、漫画に限らず日本文化の至る所に見られるものだ。最近、イギリスの料理番組で、日本食をテーマに料理を競ったところ、出来上がった料理が中華風の蒸しまんだったり、インドの食材を利用したカレーまんだったことで炎上したらしいが、当の日本人からしたら、それらは日本国内で日本食として受容されているものとしか思わないだろう(https://www.jiji.com/jc/article?k=2020102900836&g=int)。

 『NARUTO』は、なんでも取り込む日本文化の最も先端的なあり方を示していたのかもしれない。日本から生まれた「忍者」が海外で全くことなる「NINJA」となり、それすらも取り込んでしまった。内容以上に、その在り方が大変に日本的な作品だ。

参考リンク
忍者とは!? | 日本忍者協議会(https://ninja-official.com/whats-ninja
How ninjas went mainstream(https://www.youtube.com/watch?v=n5CYzHIgJFE

■杉本穂高
神奈川県厚木市のミニシアター「アミューあつぎ映画.comシネマ」の元支配人。ブログ:「Film Goes With Net」書いてます。他ハフィントン・ポストなどでも映画評を執筆中。

■書籍情報
『NARUTO -ナルト-』(ジャンプコミックス)
著者:岸本斉史
出版社:集英社

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