『舞いあがれ!』舞が成長して得たものと変わらないもの なにわバードマン編を振り返る

『舞いあがれ!』なにわバードマン編を回顧

 連続テレビ小説『舞いあがれ!』(NHK総合)の第116話に、舞(福原遥)が大学時代に所属していた人力飛行機サークル「なにわバードマン」の先輩・刈谷(高杉真宙)と玉本(細川岳)が再登場した。懐かしい顔ぶれに舞の青春時代が蘇ってくる。

 「なにわバードマン」での経験は、舞の原点だ。振り返ると、舞の今と変わってないところも、成長したところも見えてくる。

 18歳の舞が「なにわバードマン」の作業場を訪れ、まず心奪われたのはその美しい翼だ。綺麗に並んでいるリブに吸い込まれるように手を伸ばす舞は、すでに「飛行機を作ること」に魅了されていた。当時、「なにわバードマン」には女性パイロットの由良(吉谷彩子)もいた。パイロットは役割としても最重要で、花形だ。しかも体格も似通っているということであれば、舞が「由良先輩のようになりたい」と憧れを抱いてもおかしくはなかった。

 だが舞は、最初からあまりそちらには目を向けなかった。翼の型紙作りもリブ作りも同級生がすぐ飽きてしまう中、目をキラキラさせながら黙々と作業し、あまり他人と口を聞かない「永遠の3回生」・空山(新名基浩)にも話しかけ、その飛行機にかけた思いを引き出そうとした。学生時代から「モノを作ること」が好きで、人が好きなのだ。その姿勢は、「IWAKURA」を立て直そうとした時も、「こんねくと」を経営している今も変わっていないと言えるだろう。

 のちに由良の怪我もあり、舞は「スワン号」のパイロットになることを志願する。由良のトレーニングを間近で見ていた舞は、その大変さもわかっていたはずだが、その上で彼女の背中を押したのは「スワン号を飛ばしたい」という先輩方の強い気持ちだった。舞にはこうして人の思いを真っ直ぐ受け取り、自分の力に変えることができる。先輩らの熱い気持ちを知った舞は「どうにかしたい!」と強く思ったからこそ、難しい決断ができ、厳しい食事制限とトレーニングをやり抜くことができたのだ。

 大人になってからも、舞の原動力はこの「どうにかしたい!」という気持ちのように思える。だから金網フェンス工場を畳もうとしていた小堺(三谷昌登)が酒に酔って自分の窮状を訴えた時も、すぐに声をかけたのだ。そして金網フェンスをハンモックにするというアイディアを思いつき、製品化することができた。

 これがきっかけのひとつとなって設立された「こんねくと」は、商品開発だけではなく、町工場同士を繋ぐことも目的にしている。自分だけでどうにかしようとせず、頼れる人に任せられるところを任す。舞がそう自然に考えられるのは、設計担当、翼班、プロペラ班と分業して作業していた「なにわバードマン」での経験が影響していると考えられるのではないだろうか。

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