朝ドラ『ブギウギ』足立紳に加えて櫻井剛も参加 ドラマ脚本、複数人体制のメリットは?
NHKの朝ドラ第109作目『ブギウギ』にメイン脚本の足立紳に加えて、櫻井剛が脚本に参加することが決定した。
櫻井は2022年にNHKの夜ドラ枠で放送された『あなたのブツが、ここに』を手がけ、コロナ禍をリアルに描いたドラマファンの間で評判が高い。ドラマ評論家の成馬零一氏は、櫻井の作家性について次のように語る。
「『あなたのブツが、ここに』は、近年のテレビドラマでは非常に珍しい庶民の日常を掘り下げた作品で、とても印象に残りました。最近は何かをやり遂げた人や女性実業家の偉人伝的な物語が増えていますが、もともと朝ドラは“日常性”を大事にしているドラマ枠だと思います。『あなたのブツが、ここに』は、夜の“朝ドラ”ともいえる作品で、コロナ禍の庶民の日常を、とても誠実に描いた作品で、今やNHKでしかできない地に足の付いた誠実なドラマだと感じました。櫻井剛さんは『マルモのおきて』(フジテレビ系)や『悦ちゃん~昭和駄目パパ恋物語~』(NHK総合)といった、日常を丁寧に描いたドラマを得意とする方なので、次回作が朝ドラというのは納得の配置ですね。足立さんも昨年、NHKで放送された『拾われた男』がドラマ好きの間で注目された脚本家ですが、全話の演出が『あまちゃん』(NHK総合)の井上剛さんだったこともあってか、男性を主人公に90年代以降の現代を描いた朝ドラのような話でした。2022年にNHKで注目されたこの2作には、今のテレビドラマに欠けている庶民の日常が描かれていたので、足立さんと櫻井さんという、今、朝ドラを書くべき人が『ブギウギ』に揃ったのだと思います」
『ブギウギ』は現情報だと、2人体制での脚本制作となる。現在放送中の『舞いあがれ!』(NHK総合)は桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太の3人体制で脚本を担当している。近年に始まったことではないが、朝ドラ脚本の複数人担当制が起きているのはなぜか?
「今は過渡期なのだと感じます。『舞いあがれ!』では桑原さんが書いたパートはシリアスですが、他の脚本家が書かれた航空学校編などのパートは、コミカルな感じで進むことに対して賛否が別れていて、ドラマに統一感を求める人からすると、違和感が大きいみたいです。製作期間が長い朝ドラは、一人で執筆すると脚本家に負荷がかかり過ぎてしまうので、複数の脚本家で分業していく書き方は、働き方改革以降の流れとして必然だと思います。今後は、連続ドラマの演出のように、メイン脚本家を一人立てて、他の脚本家がメイン脚本家の世界観を踏まえた上で、サブエピソードを書いていくというような流れになっていくのではないでしょうか。『ブギウギ』も2人体制ではありますが、足立さんがメイン脚本家として世界観を構築する形になると思います」