高橋一生の『岸辺露伴は動かない』をまだまだ観たい! 驚くべきアレンジを成立させた「D.N.A」

『岸辺露伴は動かない』実写化は大成功

 高橋一生が主演を務める『岸辺露伴は動かない』(NHK総合)が、12月30日に3夜連続放送の幕を下ろした。

 最終夜となる第3話「D.N.A」は、原作のストーリーを活かしながら、大幅に構成とオリジナル要素を加えた作品に仕上がっている。山岸由花子は出てこないし、相手の心にズケズケと入り込む露伴(高橋一生)のセンシティブな発言はカット。真央(北平妃璃愛)のシッポや濡れた足の歩き方、山形を舞台にした後半の物語も存在していない。

 けれど、そこをカバーするのが、第1話より物語を繋ぐ縦軸として引き続き登場している泉京香(飯豊まりえ)と、ほぼオリジナルキャラクターと言っていい平井太郎(中村倫也)だ。ここは、初めて『岸辺露伴は動かない』を観る人にもより分かりやすく、連続短編としての長所も活かした構成になっている部分だ(「スタンド」という言葉を使わず、「能力」「ギフト」に言い換えているのも原作を知らない視聴者への配慮)。

 ホラーサスペンス的要素が強く出た第1話「富豪村」、第2話「くしゃがら」に対して、第3話「D.N.A」は年末の締め括りにぴったりなハートウォーミングな作品となった。6年前の交通事故で彼(奥野瑛太)を亡くした片平真依(瀧内公美)とその忘れ形見でもある娘の真央。太郎もまた交通事故に遭い、その亡くなった彼から臓器提供を受けていた。3人はやがて導かれるように惹かれ合う。彼らを繋ぐのは遺伝子に記憶された魂。亡くなった彼の口癖だった「きっといいヤツ」を真央と太郎が合言葉のように言い合うラストは、原作の物語を見事に昇華させた感動的なシーンだ。

 中村倫也が演じる太郎もハマり役であったように思う。都会的な写真を撮るバキバキのビジネスマンだった以前から、事故に遭い記憶を失ってからは京香の言う“ふんわり彼氏”に。まるで『この恋あたためますか』(TBS系)の浅羽拓実と朝ドラ『半分、青い。』(NHK総合)の朝井正人を行ったり来たりするような、中村倫也への当て書きとも言える役柄。「はちにんこ」と逆さ言葉で近寄ってくる真央の頭を優しく撫でられるのは、中村倫也が最適だっただろう。

 また、多くのジョジョファンを驚かせたのは、露伴のヘブンズ・ドアーの能力に変化が見られたことだ。第2話までは相手の顔面に本のページを置く描写であったが、第3話からは対象ごと本にしてしまう能力に変わった。これはまだ幼い子役の顔に本を置くことができなかったり……という考えもチラつくが、ヘブンズ・ドアーが成長したが正しい、のだろう。

 第1話の冒頭、露伴は「『ピンクダークの少年』は、先月第8部の連載が始まったばかり」と発言している。これは荒木飛呂彦が現在連載中の『ジョジョリオン』に掛けたセリフでもあるが、それほどまでに年月が経っていることを示す言葉でもある。露伴が敬愛する広瀬康一のスタンド・エコーズがACT3までに変化したように、『ジョジョの奇妙な冒険』のキャラクターは成長する。『岸辺露伴は動かない』のエピソード「密漁海岸」で露伴が、たこにヘブンズ・ドアーを使った例があるように、今回の成長も何らおかしくはないだろう。何よりも、真依と真央、そして太郎が飛び出す絵本になって手を繋ぐ演出へと導く結果になったのだから。

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