引きこもりから読書インフルエンサーへーー豊留菜瑞に聞く、「忙しさ」の幻想から解放される方法

『忙しさ幻想』豊留菜瑞インタビュー

「TO DOリスト」から「WANT TOリスト」へ

ーーなるほど、その意識が「豊留さんだからできるんでしょ?」ではなく、再現性のある内容につながっているんですね。本書は「忙しさ」の正体を暴いた上で、人生をより豊かにするという、一歩先の考え方がまとめられています。具体的な内容は実際に読んでいただくとして、「忙しさ」から解放されるための最初のステップとして、おすすめの方法はありますか?

豊留:一番おすすめしたいのは、「TO DOリスト」を「WANT TOリスト」に書き換える、ということです。最近、これも先輩の経営者に言われて「まさにWANT TOリストのことだ!」と思ったのですが、「うまくいっている人は、削る、削ぐ、行動するの3つの原則で動いている」と。忙しくてタスクノートをつけている方は、やらなくていいことまでタスクとして書き込んでしまって、より忙しい気持ちになってしまっていることが多いと思んです。そこから「すぐにやらなくてもいい」ことをざっくり削り、さらに自分の優先順位のために細かく削いでいって、実際に行動する。そのために「WANT TOリスト」を書いてもらえるといいのかなと思います。

 そもそも「TO DO」=「やらなければいけないリスト」では楽しくありませんし、時間の捉え方が「忙しい」になってしまうので、「やりたいこと」に置き換えていくことが重要なんです。例えば、私の「WANT TOリスト」にはもちろんお仕事も入っていますが、同時に「服を捨てる!」のような、プライベートでやりたいことが並んでいます(笑)。日々のタスクに、ワクワクを一緒に詰め込むということですね。

ーー義務的にこなさなければならないことも、「WANT TOリスト」に並んでいれば「やりたいことにつながること」にも見えますし、「忙しさ」を助長するタスクではなくなっていくかもしれませんね。

豊留:そうなんです。なぜみんな忙しく感じてしまうのか、もっと広く言えば、なぜみんな自信がなくなってしまうのか、と考えると、私は「自分がちゃんとできていることを可視化していない」からだと思っていて。なので、「やらなければいけないこと」をまとめるためではなく、「やることやってるじゃん!」ということを可視化するために、ノートをつけていただきたいんです。

ーー「ワクワク」というキーワードも出ましたが、本書もただ役に立つものを目指されたというより、愛らしくおしゃれな装丁、随所に出てくる雑学的な知識も含めて、「読んでいて楽しい」ことが意識されているように感じました。

豊留:執筆に際して、「新しい視点を持つことって楽しんだな」と思っていただきたい、という願いがあって。「正しいこと」や「常識/当たり前」に縛られず、一旦そこから離れてみると物事の見え方が変わるし、人生も楽しめるようになるんだな、と感じていただけたらうれしいなって。

ーー確かに、SNS等で“正しさの押し付け合い”のような議論を見ると、心が忙しいというか、疲れてしまいますね。ちなみに、読書インフルエンサーとして本について多くのことを語られてきた中で、ご自身の著書が多くの人に読まれるというのは、どんな経験でしょうか。

豊留:そもそも本を出すということについて、超プレッシャーを感じました(笑)。そのなかで多くのご感想をいただけて、うれしかったのは「この本を読んで、もう時間に関する本を読まなくてよくなったので、時間が短縮されました」というもので(笑)。また「迷いがなくなる一冊として、一番欲しかった内容です」とも言っていただけて、「時間」という切り口を超えて、「気持ちが楽になった」と感じていただけるのがうれしいですね。

ーー「コスパだ!タイパだ!」という話に疲れてしまった人が救われる内容だったかもしれませんね。

豊留:私が経験してきたこと、考えて検証してきたことの集合体のような一冊なので、どんなご意見も「これまでの成績表」だと捉えてしっかり受け取りたいと考えています。

ーー本作が一作目ということにも驚きましたが、多くの読書経験と仮説・検証の蓄積をベースにして、「どこにそんな時間があるんですか?」の一言からこの本が生まれるなら、他にも幅広いテーマで執筆ができるのではと。

豊留:ありがとうございます。本当にできなかったことが多くて、自分自身で人体実験してできるようになってきたという感覚があるので、もう次のテーマについて話し合っています。最近、コミュニケーションについて教えてほしい、という声を多くいただくので、もっと楽に人間関係が構築できるように今度は「人見知りの鎧」について書きたいなと考えていますので、ぜひ続報をお待ちいただければと。

ーーなるほど、「忙しさ」という幻想のなかで、「人見知り」という鎧を着て生活している……という人も多そうですね。

豊留:最後にお伝えしたいのは、忙しかったら逃げたらいい、ということです。道は一本しかないように見えますが、反対を向いてまっすぐ歩けばそれも道ですし、忙しさに苦しめられて、自分の何かが縛られているのであれば、いったん解放してあげてください。『忙しさ幻想』がその一助になれば、本当にうれしいです。

■書誌情報
『忙しさ幻想』
著者:豊留菜瑞 
価格:1,540円
発売日:2025年4月11日
出版社:サンマーク出版

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