「日本人が行かない地域」への飽くなき探求心 “リアル”を伝える旅行系YouTuber、SUに聞く「世界史の食べ歩き方」

旅のテーマや目的は人それぞれ異なる。食べ歩き、観光スポットめぐり、ショッピングなど、訪れる場所によってもさまざまな楽しみ方があるだろう。
そんななか、YouTubeチャンネル登録者数が30万人を超える「SU channel/旅行」を運営するのが陶山(すやま)健人だ。日本人があまり行かない国や地域を訪れ、ガイドブックには載らないリアルな情報を紹介するコンテンツは、多くの支持を集めている。
今回は『世界史の食べ歩き方』(クロスメディア・パブリッシング)の著者である陶山ことSU氏に、YouTubeで情報発信を始めたきっかけや、“国境マニア”ならではの旅の醍醐味や魅力について話を聞いた。
「歴史・グルメ」の軸で、日本人が行かない地域を取り上げる独自のスタイルを確立

――まずは、これまでのキャリアについて教えてください。
陶山健人(以下、SU):私は地元の愛知県にある自動車メーカーに新卒で入社し、約10年間務めていました。自分自身、海外で働くことに興味があって、入社当初から海外赴任を目指して何度も挑戦していました。しかし、なかなかチャンスに恵まれず、最終的には28歳のときに退職を決意しました。
その後は、自分をリセットする期間を一度つくろうと思い、これまで忙しくて行けなかった海外旅行へ出かけたりしていたんですね。その時期にちょうど流行り出したのが「航空会社のステータス修行」だったのです。
これはANAやJALなどで一定の回数以上搭乗すると、会員ステータスが上がる仕組みですが、平日に安い航空券で何度も飛行機に乗る必要があり、平日に時間がある人しか挑戦できないんですよね。
当時は時間に余裕があったので、ステータス修行に取り組む様子を動画として記録し始めたのが、YouTubeを始めるきっかけになりました。私は愛知県出身で、中部国際空港(セントレア)を拠点にしていたのですが、当時は羽田や成田、関西空港発の情報を発信している人はいても、セントレア発の情報はほとんどなかったんです。そこにチャンスを感じて、少しずつ発信を続けていくうちに、徐々に多くの視聴者の方に見てもらえるようになり、それが今につながっています。
――YouTuberとして本格的に活動できる、とスイッチが入った瞬間はいつ頃だったのでしょうか?
SU:コロナ前は日本に就航するエアラインが非常に多く、まさに旅行ブームの真っ只中でした。航空券も安くて、東アジアや中国、ソウルなどへの路線も、東京・大阪以外の地方空港にも次々と便が拡充されていた時期でした。その流れの中で、私がいち早くセントレア発の旅行情報を発信していたことで、比較的早い段階から多くの方に注目してもらえるようになりました。
また、空港とも関係を築きながら情報発信を続けることで、一定の規模まで成長することができたと思っています。
そして大きな転換点はコロナ禍でした。コロナ明けには旅行需要が一気に回復し、「Go To トラベル」などの政策も相まって、旅行系YouTuberやインフルエンサーが急増しました。その一方で、「海外の有名な観光地や高級ホテルを紹介する」といった定番の動画を配信しても、正直あまり面白くないと思っていたんですね。
そこで「他の人が扱わないテーマに挑戦しよう」と決心したのです。
多くの旅行系YouTuberは再生数を狙うために、日本人にとって人気の定番スポットや、安全で分かりやすい観光地を選びがちです。しかし、私はあえてそこを外し、日本人があまり行かない地域や、少しリスクのある場所に焦点を当てるようにしました。
日本のすぐ近くにも、距離的には近いのに日本人にはほとんど知られていない場所がたくさんあります。そのような場所を、「旅」という切り口だけでなく「歴史」や「グルメ」と掛け合わせて紹介していくスタイルが、現在の自分の活動の原点になっています。
島国だからこそ惹かれる“国境ロマン”。忖度ない発信が差別化を生む
――「日本人があまり訪れない地域」の情報収集はどのように行っていますか?
SU:基本的に、情報収集は徹底的にネットで調べています。ただそれだけではなく、信頼できる知人から直接話を聞くことも多いです。今はSUポメロ株式会社という会社を立ち上げ、韓国語と中国語が話せるスタッフが在籍しているので、現地情報のリサーチもかなり精度が上がりました。
やはり一般的には、あまり知られていない場所や行ったことのない場所に対して、「危ないのではないか」と見られがちです。でも実際には確かな情報に基づかない思い込みであることも少なくなく、現地に行ってみると想像と全く違うことも多くあります。
例えばロシアや中国といった地域は、国際的にはネガティブなイメージを持たれやすいですが、現地の人々は日本人旅行者を普通に歓迎してくれるんですよね。
そのような体験から、「現場で確かめて、自分の目で伝える」という“現場主義”の姿勢を大切にしています。
――他の配信者との差別化で意識していることや、コンテンツ制作で工夫している点を教えてください。
SU:例えば、「この場所に旅行へ行ってみたい」と思った際にネットで写真や情報を調べると、実際よりもかなり“盛られている”ことが多く、実際に行ってみたら正直あまり感動しなかったというケースも珍しくありません。
もちろん、逆に想像以上に素晴らしい場所に出会うこともありますが、良い部分だけを切り取って発信する現代の今のSNSや動画のスタイルに少し違和感があって。個人的にはあまりそこに面白さを感じていなくて、私自身は自分の目で見たリアルな感想や写真を、忖度なく率直に届けることを大切にしています。
一般的な旅行系YouTuberは、安全で分かりやすく、映える場所や高級ホテルなどを中心に紹介しますが、私があえて「誰も行かなさそうな場所」に行っているのは、そうした場所でしか体験できない景色や人々との出会いがあるからです。
特に私が興味を持っているのが「国境」のエリアです。日本は島国なので陸続きの国境がないからこそ、国境の先に言葉や文化、顔立ちまでまったく違う世界が広がっている光景にすごく興奮するんですよ。
最初は、国境の話にどのくらいの需要があるか不明でしたが、自分が興奮しながら語っていると、想像以上に大きな反響がありました。日本は島国ゆえに“国境ロマン”に惹かれる人が意外にも多くいると実感しましたし、このテーマを軸に発信している人がほとんどいないことにも気づきました。そうした理由もあって、「誰も切り取らない視点」を軸にコンテンツを作っています。
知らなかった世界を知る「喜び」や「興奮」こそ旅の醍醐味

(クロスメディア・パブリッシング)
――「国境」をキーワードにした動画で印象的なものはありますか?
SU:中国と北朝鮮との国境の街である丹東市を訪れた動画は、500万再生を超えるほど大きな反響だったので印象に残っていますね。ずっと行ってみたい場所だったのですが、実際に撮影して公開すると、想像以上のリアクションがあったんですよね。
北朝鮮にネガティブなイメージを持っている人が多いなかで、わずか数百メートル先にその国がはっきり見えるという現実に、多くの視聴者が惹きつけられたわけです。その様子を見て、「リアルな距離感がわかる体験こそ、人は強く惹かれる」と実感したことで、他の国境も取り上げるようになったのです。
特に印象深いのが、中国・北朝鮮・ロシアの三国が交わる国境です。実は日本からそれほど遠くない場所にあり、天気が良ければ日本海まで見えるんですが、これまで誰も取り上げていなかったのもあり、自分が現地に立ったときの高揚感は今でも忘れられない思い出になっています。
また、ロシアを訪れた際も強く印象に残った国境体験があります。モスクワに行った際、EUとの陸路は経済制裁の影響でほとんど閉鎖されていたのですが、唯一通過できたのがエストニアの検問所でした。そこをバスで通過したときには何度も尋問があり、緊張しながらも国境を越えた瞬間は、今でも鮮明に覚えています。
もちろん、お金をかけた豪華な旅行も価値があります。でも私は「知らなかった世界を知ることの喜び」や「その場に立つことで味わえる興奮」が、旅行の満足度を大きく左右すると思っています。
――「国境」を目掛けて旅に出る魅力や楽しみ方について教えてください。
SU:いわゆる“国境ロマン”は、日本人に限らず多くの人が惹かれる感覚だと思うんです。日本は島国のため、そうした非日常の感覚を求めるなら海外へ渡航する必要がありますが、私が訪れる中国やロシアの国境地域はややハードルが高く、初めての方にはハードルが高いと感じるかもしれません。
そこでおすすめなのが、韓国のDMZ(非武装地帯)です。高台にあるスターバックスは、北朝鮮の風景を眺めながらコーヒーを飲むという“国境のリアル”を体験できる場所で、初心者でも安心して訪れることができます。
また、タイやミャンマー、ラオスの三カ国が接する「ゴールデン・トライアングル」は有名で、「タイ側の観光地に滞在して、メコン川越しに国境を感じる」だけでも、十分に面白い体験になるのではないでしょうか。
あとは、今まで訪れた国や地域の中で、「一番景色が印象に残っている場所はどこですか?」と聞かれると、私は迷わずウイグルと答えます。中央アジアと面している圧倒的な景色は、本当にどこにもない素晴らしさがあります。
しかし実際にはウイグル問題の影響もあって「行ってはいけない場所」「訪れるのは不謹慎」という空気感があるのも事実です。ですが、あくまで観光地としては開かれていて、「シルクロード・ウイグルの旅」という形で旅行会社のツアーで販売されているなど、行こうと思えば一般の旅行者でも訪れることが可能です。
現地の美味しい料理は「屋台」よりも「レストラン」で味わえる
――旅はトラブルがつきものと言いますが、思わぬ危険に巻き込まれないために意識していることは何かありますか?
SU:幸いにも、私はこれまで大きなトラブルや危険な目に遭ったことはほとんどなくて。南アフリカのように治安が悪いとされる場所や、アメリカで薬物汚染が深刻な地域を訪れた際も、基本的な注意を怠らずに行動していれば、特にトラブルには巻き込まれませんでした。もちろん、運が良かった部分もありますが、自分なりにリスク管理を徹底し、用心深く行動することが重要だと実感しています。
私自身、過激な演出で視聴者を引く発信はあまり興味がなくて。ある種、意図的に誇張したり刺激的な部分だけを切り取ったりするのは避け、「等身大の視点で現場のリアルな体験を伝えること」を大切にしています。
治安が悪い地域では、現地の情報を十分に調べたうえで、必要であればツアーの利用や信頼できる現地ガイドの雇用などを行っており、それが結果としてトラブルを回避できているのではと思いますね。
――海外で美味しいものを見つける秘訣があればお聞かせください。
SU:「屋台こそが現地の食事」という考えには少し違和感があります。実際に現地へ訪れてみると、本当に美味しい料理を出すお店は屋台ではなく、地元で評判のレストランであることが多いんですよ。特に国境エリアだとその傾向が顕著に表れていて、例えば中国と北朝鮮の国境では、中国料理と朝鮮料理が混ざったような、独特の食文化が生まれていたりします。そうした場所でしっかりお金を払い、一番美味しい料理を食べるのが旅の醍醐味だと思っています。
また、北朝鮮出身のスタッフが働いている「北朝鮮国営レストラン」は、これまでロシア、中国、ラオスなどの店舗を訪れましたが、日本では絶対に味わえない緊張感や独特の雰囲気を味わうことができました。
食事で一番美味しかった旅先を挙げるなら、ウクライナとロシアですね。ボルシチは肉や魚が豊富で、新鮮な野菜も摂れるなど、日本人の味覚にも非常に親しみやすく感じました。
「日本の常識が世界の常識ではない」。若いうちに海外へ行くことのススメ
――さまざまな国や地域を巡ってきたなかで、今後はどのような活動を視野に入れているのでしょうか。
SU:自分が現地で見たリアルな真実を、自分の視点で伝えるスタンスは、これからも変えずに動画を作っていきたいですね。今後も日本人があまり足を踏み入れない地域を中心に情報発信していければと考えています。
今、特に興味を持っているのはイランやベネズエラ、シリアといった国々ですが、治安や政治的な問題で渡航の警戒レベルが高い場所なので、慎重に判断したいと思っています。それ以外にも、時事性や社会的な関心が高いエリアも積極的に取り上げていく予定です。
そして今回の書籍出版をきっかけに、講演会やイベントなどを通じて自分の経験をより多くの人に伝えていく活動を広げたいと考えています。特に若い世代に向けては、「自分の外の世界を見てほしい」というのは伝えたいですね。
日本のニュースだけを見て、日本の常識の中で生きていると、どうしても世界は狭くなってしまいます。実際に海外へ行ってみると学びや気づきが多く、多少お金を使ってでも「体験」に投資する価値は大きいと私は考えています。
年齢を重ねるほど、長距離移動やハードな旅は体力的にも精神的にもきつくなっていくからこそ、体力があって身軽な若いうちに、いろんな国を見てほしい。
そういう思いを伝えていけたらいいなと思いますね。
■書誌情報
『世界史の食べ歩き方』
著者:陶山健人
価格:1,980円
発売日:2026年1月30日
出版社:クロスメディア・パブリッシング






















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