【連載】嵯峨景子のライト文芸新刊レビュー 氷室冴子の伝説的な古代ファンタジー復刊など、5作品をセレクト

古宮九時『Unnamed Memory -after the end-V』(電撃の新文芸)
1月からTVアニメ第2期が放映中の、大人気シリーズの新章第5巻。絶大な力を持ち、永い時を生きてきた大陸最強の魔女・ティナーシャと、強国ファルサスの王太子・オスカー。当初は契約関係から始まった二人はやがて愛し合い、共に人の道から外れた逸脱者となって、外部者の呪具を破壊する使命を背負う。
ティナーシャにスポットを当てた2部構成の物語では、どこかに生まれ直す夫・オスカーを探す彼女の姿を、時代が異なる二つのストーリーで展開。前半部となる「円卓の魔女」は魔法大陸を舞台に、奇妙なかたちで人が消滅する行方不明事件を調べ始めたティナーシャが出会う、おぞましくグロテスクな呪具とのスリリングな戦いを描く。かつてティナーシャと関わった魔女や精霊たちも登場し、再会や共闘に胸が熱くなるだろう。
続く「鳥籠の女」は、物語の時間軸で一番未来の話にあたる。帝国と呼ばれる国に現れたティナーシャは皇帝と取引をし、“鳥籠”という部屋に閉じ込められていた。彼女のもとに、アルファス・クロイツァー少佐が命令で訪れるが……。人間を管理し支配する帝国への反旗を翻す戦いと共に、ティナーシャの果てしない孤独とオスカーに対する深い愛の姿が描かれる。
後白河安寿(原作/村田真優)『小説 ハニーレモンソーダ』(集英社オレンジ文庫)
内向的な性格の中学生・石森羽花は、「石」というあだ名をつけられ学校でいじめられている。だが娘に甘い両親は受験勉強が忙しいという羽花の言葉を信じきり、友達が一人もいないことにすら気づいていなかった。中3のある日、羽花はレモン色の金髪をした少年・三浦界と出会い、彼の一言がきっかけで進路を変える決意をする。「今の自分を変えたい」と願う羽花は、真面目な優等生である自分に合った進学校ではなく、華やかで自由な八美津高校という異なる環境に飛び込んだ。高校で再会した界はそっけない塩対応をするが、見えないところで気づかいや優しさをみせるのだった。羽花は八美津高校でさまざまな人たちと関わりながら世界を広げていくが……。
実写映画化やテレビアニメ化など、メディアミックスでも人気を博す大ヒット少女マンガのノベライズ。何事にも後ろ向きで自己肯定感が低い少女が、新しい環境の中で少しずつ居場所を築き、自分自身にかけられた呪いを解いていく。界に対する恋心の自覚など、甘酸っぱくてキュートな恋愛描写も本作の大きな見どころだ。少年少女の揺れ動く感情と、きらめく青春の日々を繊細に綴る物語を、小説版でも味わいたい。
























