アザラシ、ラッコにハシビロコウ 動物たちの写真集好調の理由は? 編著者・南幅俊輔に聞くヒットの法則

「経験上、どんな動物にも必ず熱烈なファンがいることを知りました。それもファンの多くは子どもたちではなく大人が多い。動物園や水族館は親子連れやカップルの姿を多く目にしますが、それに負けないぐらい高性能カメラを携えた中高年の方もたくさん訪れています」
来園者が高性能カメラで園内の動物を撮影し、その高画質な写真がSNSに投稿されることで、施設の動物たちの魅力がより多くの人に広まりやすくなり、SNS上で話題になる機会が増えたという。
「そうした方が熱心に撮影しているのは、ツシマヤマネコ、マヌルネコなどの小型ネコ科。オオヤマネコ、カラカル、ユキヒョウ、チーターなどの中大型ネコ科。コアラやウォンバット、クオッカなどの有袋類。海棲哺乳類ではイルカ、シャチ、シロクマなどが人気者ですね」
◾️マイナー動物にも注目が集まる
またこれまで国内であまり知られていなかった種類の動物が、その不思議な生態とともに注目を集めるケースも多い。その代表例が「動かない鳥」として話題になったハシビロコウだ。
「今から15年程前に「動かない鳥」として話題になったハシビロコウは、伊豆シャボテン公園の「ビル」(2020年永眠)や、千葉市動物公園の「しずか」と「じっと」も人気を牽引していましたが、2016年に掛川花鳥園でハシビロコウ界のアイドル的存在「ふたば」の登場が決定打になりました。かわいらしい容姿や飼育スタッフとのほのぼのとしたやり取りで心掴まれる方が続出したようです。ハシビロコウは体の大きさ(身長約120センチ)や顔のつくり(正面顔)、しぐさ(お辞儀)が私たち人間に近いものがあり、ハシビロコウは鳥から、それ以上のキャラクター化した存在になったと感じています」
2023年にアニメ化された人気漫画『シャングリラ・フロンティア~クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす~』でも、主人公のキャラクタービジュアルはハシビロコウがモチーフになっていることによりアニメファンの注目を集めている。
コロナ禍を経て、動物園や動物保護施設によるSNS発信が定着。また来園客が使用するカメラの高性能化によって投稿される写真のクオリティが向上。SNS上で話題が絶えず、動物園とファンの間での好循環が生まれ、この流れを背景に、動物たちの魅力を形にした写真集も多くの人に求められるようになったことが、動物写真集が出版業界でも売れ筋商品として注目を集めていると言えるだろう。最後に南幅氏が注目している動物について聞いた。
「個人的には国内では名古屋の東山動植物園のみで飼育しているラーテル。ラーテルはアフリカ、アラビア半島、インドに生息するイタチ科の動物です。体の大きさはイタチほどの小柄ですが、勇敢でライオンにも向かっていきます。世界一怖い物知らずの動物として、ギネスブックにも登録されています」
◾️南幅俊輔プロフィール
盛岡市生まれ。グラフィックデザイナー&写真家。2009年より外で暮らす猫「ソトネコ」をテーマに本格的に撮影活動を開始。ソトネコや看板猫のほか、海外の猫の取材、その他さまざまな動物たちの撮影も行なっている。著書に『ワル猫カレンダー』(マガジン・マガジン)、『美しすぎるネコ科図鑑』(小学館)、『ふたばPHOTOBOOK』(廣済堂出版)、『踊るハシビロコウ』『マヌルネコ15の秘密』(ライブ・パブリッシング)、『ハシビロコウのふたば』『ハシビロコウカレンダー』『ハシビロコウ手帳』(辰巳出版)など多数。企画・撮影・デザインでは『ねこ検定』『ハシビロコウのすべて』『ゴリラのすべて』『ラッコのすべて』(廣済堂出版)がある。4月1日にコアラの本『コアラのひみつ』(カンゼン)が発売予定。


























