アザラシ、ラッコにハシビロコウ 動物たちの写真集好調の理由は? 編著者・南幅俊輔に聞くヒットの法則

アザラシやラッコなど海の動物たちの写真集がヒットしている。昨年12月16日に発売された『アザラシまるごとBOOK』(辰巳出版)は、予約開始から2時間で各EC書店で完売。また昨年4月に発売しされた『ラッコのすべて』(南幅俊輔)は 5刷の重版となり、昨年7月に発売された『ラッコBOOK』(グラフィック社)も発売前に重版されるなど、継続的にヒットが続いている。
出版不況が叫ばれて久しい中で、なぜ動物たちの写真集が続々と発売され、ヒットしているのか。『アザラシまるごとBOOK』『ハシビロコウカレンダー』シリーズなど、これまで多くの動物写真集や書籍を手がけてきた、編著者でデザイナーの南幅俊輔氏に話を聞いた。
◾️SNSで話題となった『アザラシ幼稚園』

動物写真集がヒットしている要因には、動物園や水族館などの施設がSNSを積極的に活用するようになったことが大きいという。
南幅氏は「コロナ禍では、休園を余儀なくされていた動物園や水族館は動物たちの様子を盛んにSNSで発信していました。実際に動物園に訪れると動物たちは遠くにいたり、寝ていたり、タイミングが合わないとその魅力が伝わらない面もあります。それがいつもお世話をしている飼育スタッフが、いきいきとした動物たちの様子を伝えることで、その魅力がダイレクトに私たちに届いたということだと思います」と語る。
SNSがきっかけで動物たちの魅力が広く知られるようになったケースの最たる例が、昨年に新語・流行語大賞にもノミネートされた『アザラシ幼稚園』だという。

ピーテルブーレンアザラシセンター 『アザラシまるごとBOOK』収録ページ「『アザラシ幼稚園』の24時間配信もその一環です。昨年8月にオランダの北部にあるアザラシ保護施設『ピーテルブーレンアザラシセンター』のライブ配信をXで紹介した方がいて、日本のユーザーの間で『アザラシ幼稚園』と呼ばれるようになり、話題になりました」
漁業用の網や海洋ゴミにより負傷したアザラシの保護を目的とした「アザラシ幼稚園」。現地の様子がYouTubeで24時間配信されていることが紹介され、プールに垂直に浮かぶアザラシたちが「茶柱みたいで可愛いすぎる」と話題に。また同時に施設の保護活動内容が知られると、多くの日本人視聴者からの寄付が増加。前述の『アザラシまるごとBOOK』も、施設を支援したいという編集者の想いから企画がスタートしたという。
「本書の発行元である辰巳出版の編集者が、施設の取り組みに共感し『チャバシラ』という名のアザラシと養子縁組をしたり、本書の売上げの一部をアザラシ幼稚園に寄付することを発表しました。アザラシ幼稚園のファンの皆さんも『アザラシ幼稚園の支援に繋がるなら』と予約してくださり、そのアザラシ愛がヒットに繋がったとおもいます」
またオランダの『アザラシ幼稚園』が話題になったことがきっかけで、日本のアザラシ保護施設も多くの人に知られるようになった。

「日本にも、北海道・紋別にある『オホーツクとっかりセンター』という日本唯一のアザラシ保護施設があります。もともとファンが多かったこの施設に『日本にもアザラシ幼稚園がある!』と知られ、新たに注目されました。『アザラシまるごとBOOK』においても、オランダのアザラシ幼稚園とこちらの施設を掲載しています。アザラシへの注目度が集まっていた中で、また私はもともとグラフィックデザイナーなので、単なるアザラシ写真集ではなくアザラシ生態解説などのビジュアルもたくさん掲載し、わかりやすく内容を伝えることを心がけ作りました。アザラシの魅力をもっと知ってもらうため、何度も読み返して欲しいんです」

◾️来園客が使用するカメラの高性能化
また動物園がSNS上での話題になる理由として、一般人が使用するカメラ機材が高性能化していることも大きな要因だという。