人間はなぜ太るのか? 肥満当事者が『肥満の科学』で知ってしまった不都合な真実

人間が太る科学的メカニズム

 自分は現在、BMI30を余裕でぶっちぎっている、まごうことなき肥満である。過去にはグッと体重を落としたこともあった(その方法についても、当サイトに書いたことがある)が、数年が経過してそれはそれは見事にリバウンドし、現在は非常に残念な体型となっている。それどころか、ちょっと前には痛風になってしまった。あれ、本当に痛いですね、足が。

 そんな肥満当事者ではあるものの、「なぜ自分がこんなに太っているのか」「人間はなぜ太るのか」という点について突き詰めて知ろうとしたことはなかった。なんとなく「大して運動もしてないのに、ガツガツとメシを食べているからだろうなあ」と思っていた。摂取しているカロリーと消費しているカロリーが不均衡で、摂取側に大きく傾いているから太っているんだろう、でも食べられるなら食べたいだけ食べてしまうのが生き物の本能なのだろう、と、なんとなく思っていたのである。

 しかしよく考えれば、それでは説明のつかないことが世の中にはたくさんある。大して強烈な節制をしているわけではないのに太らないという人もいるし、野生動物にしても、冬眠をするものは意図的に栄養を溜め込み、肥満状態になってから冬眠に入ると聞く。「野生動物は人間と違っていつでも食料が手に入るわけではないから痩せている」と思っていたが、野生動物がタイミングを見て意図的に太れるのであれば、逆に普段は節制して太らないようにしているということになり、「人間を含め、動物が太るのは本能」という理屈は崩れてしまう。

 ではなぜ人間だけがバクバクと食べたいだけハイカロリーなものを食べ、ブクブクと太り続けることになっちゃったのか、という点に、現在の研究成果から答えた書籍がリチャード・J・ジョンソン著『肥満の科学 ヒトはなぜ太るのか』である。非常に都合の悪いことばかり書いてあるというか、読んでいて「じゃあどうすりゃいいんだよ……」という気分になる本ではあったけれど、何をどうしても体重が落ちないという人は必読の内容だと思う。

 本書でまず説明されるのは、脂肪やいわゆる生活習慣病は、食物が簡単に手に入らない自然環境では決して悪役ではないという点である。人類史において好き勝手に食べ物が手に入るようになったのはつい最近の話で、我々の体はそれ以前の食糧不足に合わせてチューンされている。そのあたりはまあ、想像していた通りである。

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