マウンティングを制するものは人生を制す? 異色の自己啓発本『人生が整うマウンティング大全』誕生の背景

異例のマウンティング啓発本、誕生の背景

マウントを取りに行ってみる

――あまりに“あるある”な事例ばかりで、頷きながら話を聞いてしまいました。

ポリス:でも、私は決して“マウンティング野郎”を貶めたいわけではないんです。というのも、マウンティング欲求を味方につければ、前向きで、希望のある考え方ができると思うんです。少なくとも、マウンティング自体はネガティブな感情ではありませんから、世の中、人々を前に進めることに繋がると思うんですよね。

――本の中で、ポリスさんは“マウンティングリテラシー”という概念を説いておられます。それを身に着けるためにはどうすればいいのでしょうか。

ポリス:そのためには、徹底的なインプットがまずは大切です。私の本でも、ある程度の事例を紹介しているので、率先して学び、自分から動いてマウンティングを取りに行ってほしいですね。自分が属している業界や職種、住んでいる地域などに特有のマウントもあると思いますから、自分の中でこれは、というマウンティングをやってみてはいかがでしょうか。

――本書を読んで、実践してみるべきマウンティングはどんなものがありますか。

ポリス:私は「達観」マウントが好きですね。資本主義社会から卒業して「世の中お金じゃないんだ」と言い、インドに行って僧侶になった……みたいな事例を見ると、若干マウント的な感じがするんですよね。あとは貰った名刺の数とか、サウナに通った回数などもいいかもしれないですね。

――「東大卒否定」マウントは使いやすいですよね。

ポリス:これはみなさん、使ったことがあると思うんですよ。東大という圧倒的な知的なものを否定し、自分が上だと言うわけです。東大出身者は一般的に頭がいいと言われているのに、自分からすると頭がいいとは思えないとか、仕事ができないとか。新入社員の面接を担当するようになったビジネスパーソンは、「この前面接した人は東大だったけど、大したことなかった」とか、言えますよね。もっとも、これがエレガントかどうかは、その人の使い方次第だとは思いますが。

マウントフルネスで幸せに

――ポリスさんは、「日本経済にはマウントが足りない」とおっしゃっています。

ポリス:日本の家電製品はスペック的な部分ばかり追求した結果、グローバルな市場で勝てなくなりました。よく、機能ではなくユーザーエクスペリエンスが大事だと言われますが、私は“マウンティングエクスペリエンス”を大事にすべきだと思います。これは、人間の根源的な欲求であるマウンティングという俗っぽいものを、ユーザーエクスペリエンスに加えることを意味します。

――マウントを活かすと、経済はどう成長していくと考えますか。

ポリス:世界で一番のお金持ちはLVMHのベルナール・アルノーで、2位はテスラのイーロンマスク。両者ともマウンティングを好んでとっていますし、人々にマウンティング体験を与えてきた人たちです。彼らのようにマウンティングをコントロールできれば、確実に日本経済にとってプラスになると思います。あと、世界を席巻しているFacebookなどのSNSのように、マウンティング体験を適切に設計できれば、世界的なイノベーションが生まれる可能性が高まります。

――日本人は欧米人に対して、奥ゆかしすぎるイメージはありますよね。

ポリス:iPhoneはテクノロジーがサービスの普及を決定づけたのではなく、マウンティング体験から逆算して作られています。これが本質的な価値だと思います。今後、発展途上国などの国もどんどん豊かになっていくと思いますが、今後の消費を牽引していくのはマウンティング消費だと思うんですよ。SDGsを筆頭に、「環境にやさしい」などの世界的なマウンティングトレンドは現在、欧米が創り出しています。そういうトレンドを日本から生み出していければいいのです。

――閉塞感がある日本で、それが可能でしょうか。

ポリス:困ったことに、マウンティングデザイナーが日本には少ないんですよね。スマホだけで世界に繋がり、テクノロジーが進化して便利になっても、我々は幸せになっていない感じがします。むしろこれで苦しんでいる人が多い気がします。マインドフルネスが盛んに叫ばれていますが、あまり社会が幸せになっているとは言い難い。ひょっとすると、マウントフルネスの方が幸せになるのではないかと思っています。

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