【ライトノベル最新動向】「薬屋のひとりごと」シリーズ、アニメ大ヒットで週間ランキングを席巻!
狐目に片眼がねをかけた怪しげな男、羅漢と猫猫との関係が明らかになって、羅漢の人物的な深みが増し物語的にも広がったTVアニメ『薬屋のひとりごと』。原作の人気も沸騰中で、日向夏によるシリーズ最新刊で3月29日に発売となる『薬屋のひとりごと 15』(ヒーロー文庫)は、Rakutenブックスのライトノベル週間ランキング(3月11日~17日)で1位となった。
ライトノベルとしては、20位までに14巻までの既刊分がすべてランクインしてランキングを席巻している。10位まででも9冊が「薬屋のひとりごと」シリーズという独占ぶり。しのとうこによるイラストを集めた『薬屋のひとりごと画集』(主婦の友社)も27位に入っている。
過去にもTVアニメ化や実写映画化で原作人気が盛り上がり、既刊本を含めてランキングを占めた顎木あくみ「わたしの幸せな結婚」のシリーズや、佐伯さん「お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件」シリーズの例があるが、「薬屋のひとりごと」シリーズのように、1ヶ月といった長い期間を独占し続けてはいなかった。TVアニメの良さが原作小説の魅力に気づかせ、読んだことがなかった人にも手に取らせているのだろう。最新刊はRakutenブックスの本全体での週間ランキング(3月11日~17日)でも5位と好調だ。アニメ第2期が2025年に放送決定したとの報もあり、シリーズの人気はまだまだ続きそうだ。
そんな「薬屋のひとりごと」シリーズの無双状態に割って入ったのが、2位の『わたしの幸せな結婚 八』(富士見L文庫)。こちらも2023年に相次いだ実写映画化とTVアニメ化でファン層が広がり、累計800万部という大ベストセラーになっている。本全体でも24位で、小説に限れば『薬屋のひとりごと 15』に続く位置にある。今もっとも読まれている小説のひとつであることは確かだ。
最新刊は長い物語ではなく中編や掌編を収録。ようやく結婚を果たした斎森美世と久堂清霞が、新しい生活を送り始めるようになったところで、少し清霞の過去を振り返った中編「霖雨がやむとき」が最初に入っていて、今は対異特務小隊で隊長を務めている清霞が、まだ学生だった頃に小隊を率いていた五道壱斗という人物と、どのような関係にあったかが描かれる。
壱斗は清霞の小隊にいる佳斗の父親で、若いながらも強い異能の力を秘めていた清霞を小隊に誘っていた。清霞は関心があったものの別の方面にも興味があって迷っていたが、そこに起こったある事件が清霞を今の隊長という立場へと向かわせる。冷酷無慈悲で任務に実直な堅物にも青春の悩みがあったのだと分かる。
清霞の父親の正清と、母親の芙由との独特な愛の確かめ方がつづられる短編「愛の証」や、登場人物たちのエピソードが並ぶ掌編もあって楽しめる。掌編では「義妹が可愛すぎる」が貞淑そうな美世の表からは見えない強情ぶりがうかがえる。
最新刊は表紙には洋装の美世が描かれて、シリーズがこれまでとは違ったフェーズに入ったことを感じさせる。ここから新たに始まる物語が美世と清霞に今まで以上の過酷な体験を与えるものになったとしても、信じ合う2人には必ず幸せが訪れることと信じて続きを待とう。