書店の読み聞かせイベント、未来の顧客を育てる上で有効でも……今後の施策はどうあるべき?
経済産業省が3月5日に「書店振興プロジェクトチーム」を設置し、書店を本格的に支援しようという動きが始まっている。大臣直属の本格的な支援に乗り出すという。書店支店のプロジェクトは初めてとなるようだ。こうした支援策が考えられるなかで関心が集まっているのが、カフェの併設や読み聞かせイベントを行っている書店である。
子ども向けの読み聞かせイベントは、書店の振興策としてたびたび目に付くようになった。その規模は様々で、プロの声優なナレーターを呼んで開催する本格的なものから、地元のお母さんが主体となるほのぼのとしたものまである。準備だけでも一苦労であるが、開催して書店の売り上げ増に繋がるのか……と懐疑的な意見があるが、実態はどうなのだろうか。
これは非常に難しいテーマである。信用に足る統計的なデータもないので、効果の有無を判断するのが困難である。おそらく、長い目で見れば多少の効果はあるだろうし、地域活性化のためにはやる意味はあると思う。しかし、それがすぐに書店の収益改善につながるとは思えない。
読み聞かせイベントの意義として、子どもの時から書店に足を運んでもらうきっかけを作り、将来の顧客を育てる効果が挙げられる。子どもの社会科見学の受け入れに熱心な企業には、そういった狙いがあったりするものだ。
例えば、三重県にある個人経営の時計店は、子どもたちの社会科見学を積極的に受け入れてきた。店主によると、子どもがやがて大人になり、店のことを覚えていてくれれば、成人式の時などに数十万円の高級腕時計をポンと買ってくれることがあるためだそうだ。
ベテランのある自動車のディーラーは、冷やかし感覚で来た子どもにまでわざわざミニカーやカタログをプレゼントするという。これは車離れが叫ばれる昨今、少しでも子どもに憧れを持ってもらい、十数年後の購入に繋げたいという思いからだという。このように、子どもを大切にすることは、長い目で見れば意味があるといえる。
ただ、特に地方の書店で同じことが通用するかというと、なかなか難しい。高級腕時計や自動車と異なり、本は薄利多売の商材であるためだ。特に、児童書は少子化が進む地方では、あまり旨味のない商材であり、短期的な利益には繋がらないという意見もある。短期的な利益に繋がらなければ閉店を考えねばならない、という書店がコロナ騒動を経て全国にごまんとあるのだ。有効な書店の支援策はどのようなものなのか。経済産業省の支援が本格的に始まる前に、議論を深めておきたいものである。