【書店ルポ】JR静岡駅前、オタクに有名な駿河屋本店が盤石……戸田書店閉店で期待高まるジュンク堂

JR静岡駅前にはどんな書店がある?

駿河屋本店。漫画・アニメのみならずホビーグッズ全般を扱うデパートのような趣だ。静岡県は日本全国のプラモデル出荷額の80%超という圧倒的なシェアを誇るホビーの町であり、その観光の核にもなり得るか、注目される。
松坂屋のとなりに駿河屋が立つ。
静岡駅前有数の繁華街、紺屋町にも駿河屋の店舗がある。

地方都市最大級のアニメショップが誕生

  今年10月6日、JR静岡駅前に中古アニメグッズなどを扱う「駿河屋」の本店がオープンした。かつてここには静岡マルイがあったが、その跡地に出店したものである。この駿河屋のオープンは、オタク界隈の間で話題になった。規模が大きく、商品の充実ぶりが半端ないというのである。

  静岡市を訪れる機会があったので筆者も初めて訪問したが、想像以上のスケールに圧倒された。フィギュア、アクリルスタンド、ぬいぐるみ、缶バッジ、同人誌、鉄道模型まで、あらゆる品物がある。そして中古商品なのに品物が綺麗であり、クオリティが高いのだ。駿河屋の集大成的な店舗であり、観光目的で訪れるに値する店舗といえる。

  店内を見渡すと、従来のオタクだけでなく、家族連れも見かける。『ポケットモンスター』のぬいぐるみや、『鬼滅の刃』『【推しの子】』『SPY×FAMILY』のグッズを小学生くらいの子どもが選んでいる。漫画・アニメカルチャーが幅広い層に浸透していると言えるし、エントランスが明るく開放的なので、家族連れでも入りやすいのだ。

駅前の賑わい創出が期待される

  駿河屋の向かいにはルイ・ヴィトンなどが入店する松坂屋があるが、駅前一等地にこれほどのスケールのオタク系の店舗が立っている光景は驚きであった。同行した静岡在住のA氏は、「駿河屋ができて、駅前に行く楽しみが増えた。少なくとも、若者で駅前が賑わう効果は生まれるはず」と分析する。

 「オープンしてから何度も通っているけれど、訪れている年齢層が広い。昨今の推し活ブームで、オタク文化が抵抗なく受け入れられるようになったと感じます。オタクが陰で隠れて活動していた昔が嘘みたい。来年は静岡が聖地のアニメも多く放送されるらしいし、タイミングとしてもちょうどいいのではないでしょうか」

  なお、駿河屋はすぐ近くの紺屋町にも店舗があり、こちらではK-POPなどアイドル関連のアイテムや、ポケモンカードなどを扱う。ブロマイドや缶バッジなど、あらゆる品物がやはり膨大な量あるので、いわゆる“痛バッグ”などの推し活アイテムを作るなら駿河屋を巡れば十分素材が揃うだろう。

  駿河屋と比較されるのが「まんだらけ」であり、こちらも18年ぶりに上場来高値を更新するなど、業績は好調だ。扱う商材は似ているが、まんだらけが得意とするのはいわゆるソフビなどのヴィンテージTOY、アニメのセル画、そして漫画家のサイン色紙や原画などである。大雑把に言えば、新しい漫画やアニメの中古グッズが強いのが駿河屋、一昔前のものに強いのがまんだらけといったところで、両社は棲み分けがなされている。

「MARUZEN&ジュンク堂書店 新静岡店」が入店する新静岡セノバ。新静岡駅は官庁街にも近いため利用者が多い。
静岡市は『ちびまる子ちゃん』のさくらももこの出身地でもある。

新刊書店はジュンク堂が健闘

 中古ショップの勢いは止まるところを知らないが、新刊書店はどうか。首都圏では新刊書店が苦境に陥っており、駅前の店舗から大型商業施設の店舗まで、閉店が続いている。静岡駅前も同様で、駅前の葵タワーにあった約60万冊を揃えた大型書店「戸田書店静岡本店」が、コロナ騒動の真っただ中の2020年7月に閉店した。県内最大級の書店の閉店ということもあって、当時は大きなニュースになった。

  そんな中で存在感を示しているのは、静岡鉄道新静岡駅に直結する新静岡セノバにある「MARUZEN&ジュンク堂書店 新静岡店」だ。戸田書店なき今、静岡の市街地では最大級の書店となっている。新静岡セノバには映画館もあり、静岡の文化発信拠点として機能しており、人通りが絶えることはない。前出のA氏は話す。

 「戸田書店がなくなったことで、ジュンク堂に行く機会が増えた。品ぞろえはさすがジュンク堂といった感じで素晴らしいけれど、静岡駅前の書店は大丈夫なのかなという不安はある。なんとかジュンク堂には頑張ってもらいたいですね」

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