小学館、海外向け「オタク文化」サイトをなぜ買収? IP活用戦略と効率化がポイントに?

小学館グループへの参画のお知らせ

 出版社の小学館は11月21日、アニメグッズの販売などで越境EC事業を行うTokyo Otaku Mode(TOM)の発行済全株式を取得し、完全子会社化したと発表した。小学館の相賀信宏社長がTOMの取締役会長に就任し、山田卓司氏がTOMの取締役に、篠原欣介氏が監査役に就任することも決定した。なお、金額面などの買収条件の詳細は現時点で不明である。

  TOMは2011年に立ち上がったFacebookのページが原点になっている。社名にもあるように、当初から日本初の漫画やアニメ、ゲームなどのサブカルチャー・オタク文化全般の発信を意図したものであった。翌年2012年には米国に会社が設立され、以後、世界中に約2000万人のフォロワーをもつ巨大サイトに成長した。

  同社が配信する情報は、英語によって作成されている。現在では海外にいる日本の漫画、アニメのファンが情報を得る際には欠かせないサイトとなっているほか、オリジナルのグッズ開発からECサービスまで多角的に事業を展開している。

  なお、TOMのプレスリリースによると、小学館は2022年に創立100周年を迎え、保有する知的財産を活用しながら海外事業を発展させていくために、様々な取り組みを進めている最中とされる。こうした両社の思惑が一致し、子会社化が決定した形だ。小学館は今後、TOMを通じて同社が所有する豊富な漫画などのコンテンツを活用し、海外展開を加速していく方針という。

  日本のコンテンツは海外に多くのファンを獲得しているものの、本格的な展開に当たっては、現地の企業と連携することが多く、タイムラグがあることも指摘されていた。小学館は既に『ドラえもん』を筆頭に、自社がかかわるキャラクターを積極的に発信してきたが、TOMの買収によって、コンテンツを展開する巨大なプラットフォームを有したことになり、従来以上の積極的なビジネス展開が行われそうだ。

  近年、日本のアニメ、漫画の人気は、動画配信サイトの普及によって全世界に広がっている。また、家電などのお家芸だった輸出産業が衰退している日本にとって、数少ない外貨獲得の可能性を秘めた成長産業という見方もある。こうした背景において、小学館同様、国内出版社による海外企業の買収が続く可能性は高いと思われる。

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