アニメ放送目前で大注目の『薬屋のひとりごと』 シリーズ最新刊も猫猫と壬氏が大活躍!
前巻の『薬屋のひとりごと13』ですでに、女華から牌を見せられた王芳という武官が、猫猫の実父で軍師をしている羅漢の部屋で、首吊り死体となって発見される事件が起こっていて、皇帝の血筋をめぐって密かな勢力争いが起こり始めているのか、といった想像をかきたてていた。『薬屋のひとりごと14』ではそうした勢力争いが表面化して来て、皇太后派と皇后派に別れた軍人が教練で傷つけ合うような事態も起こるようになって来る。
皇太后派や皇后派はすでに、それぞれ皇帝の後継者となる皇子を押し立てて争っている。女華が狙われたのは、そこに新たな火種となる、前の皇帝たちの血を引く存在が現れては困るといった思惑があるのだとしたら、女華の身に危険が及ぶことになる。それは避けたい猫猫は、出会った時は美貌の宦官に過ぎなかったのが、とてつもない存在であり、そして猫猫と惹かれ合っていく壬氏を頼って事態を収拾しようとする。
もっとも、『薬屋のひとりごと13』でついに結ばれるのかと思ったら、壬氏が土壇場で臆して猫猫を寝所から追い出すようなことが起こっていて、猫猫も昨日の今日で合うのはなかなかに気まずかったりする。後宮で起こる奇妙な事件の謎を解き、宮中を揺るがす謀略の真相を暴くミステリ的な展開の一方で、こうした女性と男性との間のラブコメ的な描写も、実はシリーズの魅力だったりする。
里樹の名前が今一度取りざたされるのも、複雑な状況におかれている彼女を深く想う男性が現れたから。他にも、猫猫や壬氏と一緒に赴いた西都で、農業の知識を活かして飢饉を防ぐ活躍を見せながら、現地に置き去りにされた羅半兄という男が、どうにか都に帰還して参加した会合で見せた振る舞いに、惹かれる女性が現れる。ずっと彼女が欲しいと言っていた羅半兄に遅い春が訪れる。
こうなるとやはり、猫猫と壬氏にも進展を期待したくなるが、そこを終着点と考えるなら早々と描いてしまう訳にはいかなさそう。今しばらくはつかず離れずの関係を見せながら、今後も相次ぐだろう事件や謀略に、猫猫が知識と好奇心で挑み解き明かしていく痛快な物語を楽しんでいきたい。
そしてTVアニメの展開も。猫猫を演じる悠木碧はぶっきらぼうで達観していて、毒や薬に目がない猫猫という少女に想像を超えてなりきっている。壬氏を演じる大塚剛央も、キャラクターの美貌に負けない美声を聞かせてくれる。10月1日に公開された本PVでは、種﨑敦美が演じる玉葉妃や久野美咲が演じる小蘭の役にハマった声を聞ける。
妃たちが暮らす後宮の部屋も、女性たちがまとう衣装も絢爛でまぶしいほど。そうした演技と絵の力に、猫猫や壬氏といった登場人物たちの活躍で謎が解き明かされていくストーリーの面白さが重なって、深夜であろうとリアルタイムで見たくなるアニメに仕上がっている。次、また次と毎話の展開を追っていき、原作に手を出したら最後、あっという間に最新刊までたどり着き、そして思うのだ。
続きはまだかと。