【ライトノベル最新動向】「とあるシリーズ」フレンダの新シリーズ登場 「お隣の天使様」も好調続く

【ライトノベル最新動向】2023年3月

 フレンダ=セイヴェルンといえば、『とある魔術の禁書目録(インデックス)』を中心にした鎌池和馬による「とあるシリーズ」でも1,2を争う可哀想な美少女だ。金髪で小柄で人なつっこく友達も大勢いたそのキャラクター性なら、御坂美琴もかくやという人気を獲得できたかもしれないにも関わらず、登場して程なく体を真っ二つにされて死んでしまった。それも仲間の手によって。

 Rakutenブックスのライトノベル週間ランキング(3月6日~12日)で4位に入った『とある暗部の少女共棲(アイテム)』(電撃文庫)はそんなフレンダが、まだ学園都市の『暗部』に所属して表沙汰にはできない任務を請け負っていた頃の物語。幾つかあるチームのひとつ、『アイテム』に所属してはスカートの中に潜ませた爆発物を操って、人も建物も木っ端微塵に吹き飛ばして回っている。

 仲間のひとりの麦野沈利は学園都市でも7人しかいないレベル5の超能力者で、『原子崩し(メルトダウナー)』という全身からビームを放つような凄まじい能力を使って、敵を焼いたり吹き飛ばしたりしている。もうひとり、滝壺理后という仲間もいて3人である研究施設を襲撃し、そこで助けた絹籏最愛という少女を仲間に加えておなじみの4人組ができあがったかと思ったら、新たに華野超美という少女が『暗部』からメンバー候補として送り込まれて来た。

 そして始まる5人での任務遂行の中で、『アイテム』の存在をめぐる不穏な動きがあり、メンバーたちがそれぞれの持ち味を生かしてバトルする展開があってと、サスペンスとアクションが好きな人なら楽しめるストーリーとなっている。やっていることの非道さを除けば、女子会のようなワイワイとした日常の雰囲気も味わえる。

 何より後に修羅のような姿となって「はーまづらぁ」と唸り襲ってくる麦野が、まだ姉御のような立ち位置で少し可愛らしい。そんな麦野を闇へと引き込む陰謀が、この頃から巡らされていたとしたら……。フレンダが見舞われる悲劇への道もうっすらと示されていて、今もフレンダを慕うファンなら抑えておきたくなる。コミック版も含めてスピンオフが増えすぎているようにも見えるが、どれも絡み合ってキャラクターの厚みを増すのに役立っているだけに、この新シリーズも読み逃せない。

 ランキングではTVアニメの人気ぶりもあって、佐伯さん「お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件について」シリーズの既刊の9冊がすべて30位以内に入る売れ行きを見せた。

 同じマンションの隣り合った部屋に暮らしながら、まったく交流のなかった同学年の藤宮周と椎名真昼だったが、雨の公園で濡れていた真昼に周が声をかけたことで関係が始まり、だんだんと深まっていくというストーリー。純真で愛らしい真昼を、TVアニメでは『さよならの朝に約束の花をかざろう』で主役を務めた石見舞菜香が演じていて、キャラの魅力を何倍にも増幅して見せてくれている。

 少しずつ重なり合っていく周と真昼の日常が、14位に入った最新の第8巻ではよりグッと深まって、そこまで行ってしまうなんてと思わせてくれるが、無愛想に見えても優しい周が一線を越えられるかというとそこは微妙なところ。逆に言うならそれだけのストーリーを積み重ねながら、じっくりと2人の心情を描き、周囲との関係を描いて見せてくれているところに、読み応えを感じているファンも多いのだろう。アニメ化によるブレイクが、「このライトノベル!2023」で文庫部門4位だったらランキングを、次にどこまで押し上げるのか気になるところだ。

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