『代紋TAKE2』『ゴールデン・ガイ』任侠漫画の大御所・渡辺潤の漫画道 萌えキャラ、デジタル原稿への飽くなき探究心
「週刊漫画ゴラク」で『ゴールデン・ガイ』を連載中の、任侠漫画の大御所・渡辺潤。近年はTwitterに定期的にUPされる萌えキャラのイラストも人気で、若い世代のファンを獲得していることでも話題だ。来る6月29日には、『ゴールデン・ガイ』の第9巻が発売される。今回は約33年に渡って漫画を描き続ける渡辺の子ども時代や、下積み時代、それに今後の挑戦など濃密な内容でお届けしよう。
『三平』と『ジョー』から受けた影響の大きさ
――今回は渡辺潤先生の子ども時代や、デビュー直後のお話などをうかがいたいと思います。先生が子どものころ、お好きだった漫画は何でしょうか。
渡辺:僕は、『釣りキチ三平』と『あしたのジョー』と出会わなかったら、漫画家になっていないと思います。『釣りキチ三平』は、親父の実家が山梨にあって、祖父と伯父が大の釣り好きだったので単行本がおいてあったので読んだらハマッたんですよ。そして、小学生の頃には僕も釣りにハマってしまい、ますます熱心に読みましたね。
――『釣りキチ三平』は釣り好きの人に愛読されていますし、漫画をきっかけに釣りを始めた人も多い人気漫画です。 渡辺:子どものころは、矢口先生が描く魚のリアリティや、美しい自然が大好きでした。三平を模写したポスターを描いて、祖母にプレゼントしたこともありますね。あと、矢口先生の漫画では『バチヘビ』が大好きで、やはりツチノコや自然物のリアルな描写にのめり込みました。
――『あしたのジョー』といえば、言わずと知れた高森朝雄先生とちばてつや先生のコンビによる傑作ですね。今も読み継がれている作品です。
渡辺:『あしたのジョー』は再放送のアニメでハマったんですよね。世界観に魅せられたのが『三平』だとすれば、キャラクターに惹き込まれたのは『ジョー』が最初かもしれません。小学生の頃は、単行本を買う小遣いもなく、もちろんビデオデッキなどもありませんでしたから、アニメの映像を思い出しながらよくジョーのイラストを描いていましたね。当時、弟も漫画が好きで絵を描いていたのですが、僕が描くジョーを見て自分には超えられないと思ったようです。子どもの頃の3歳差は大きいので、当たり前なんですけどね(笑)。ちなみに、弟は現在イラストレーターになっています。
アシスタント先の先生方の努力に衝撃
――渡辺先生はなんと中学生のときに、漫画賞を受賞されたそうですね。
渡辺:中学生で何回か賞を取りました、自分は天才だと思ってしまい、舞い上がっていました(笑)。でも、僕は漫画の基礎をまったく知らないまま、原稿を描いていたんですよ。高校卒業後、とある大人気作家さんの仕事場にアシスタントに行ったとき、生原稿を見て、迫力に圧倒されました。俺は全然天才じゃなかった…と落ち込みましたね。
――そして、渡辺先生がもっとも影響を受けた漫画家は、アシスタントを務めたハロルド先生だそうですね。ハロルド先生と一緒に過ごされて、どんな点に圧倒されましたか。
渡辺:ん~……話しても大丈夫かな。ハロルド先生は物凄い努力家なのです。先生は自分の得手不得手をしっかり分析していて、ディズニーのキャラとか、人物の表情も何枚も繰り返し描いていました。仕事場にクロッキー帳がいっぱいありました。僕は正直プロになるまでそんなことはしてこなかったんですよ。先生はもともと天才の資質があるのに、こんなに努力されたら僕なんか敵うわけがないと思いました。
――ハロルド先生、そんな一面が。私もハロルド先生のファンで、作品を読むと天才肌の漫画家さんというイメージでしたが、陰ではひたすら画力の研鑽に励んでいたんですね。
渡辺:それに、ハロルド先生は原稿が完成したその直後に、もう次回の原稿に取り掛かるんですよ。一本上がったら、普通だったら休みたいじゃないですか。ニヤニヤと笑みを浮かべながらネームを描いている姿を見て、これは、追いつけないなと思いました。一方で、先生はアシスタント経験がほぼなくデビューしているので、道具の使い方を知らないことがありました。そこは、僕が教えたりしましたが(笑)。