『女子大生、オナホを売る。』著者に聞く”販売の極意”「執拗なユーザーインタビューを繰り返したら、友だち2人なくしました」

 「タイトルに惑わされたけど、ゴリゴリのマーケティング本だった」

 「こんな手にとりにくいビジネス書、これまでにあった?」

  ネット上でそんな不思議なざわつきが溢れるなど、すでに2023年を代表するビジネス書のひとつとなったのが『女子大生、オナホを売る。』だ。

  著者である神山理子(リコピン)さんは、明治大学商学部在籍中にオナホ事業で起業。いわゆるD2C(Direct to Consumer=企画制作した商品をECで直接販売すること)メーカーを立ち上げた。

書店のビジネス書コーナーでも異彩を放つ話題沸騰のビジネス書『女子大生、オナホを売る。』(実業之日本社)

  本書では、驚きの行動力と企画立案力でぐいぐいとオナホユーザーのインサイト(潜在的なニーズ)に迫っていく様が描かれるが、実際のところどうだったのか?

 前編では、リコピンさんの今につながる原体験(幼稚園で武器商人をしていた)や、学生時代の素顔(彼氏にフラれたのをきっかけに専業主婦を目指し、マーケティングを学んだ)に迫ったが、後編では、そんなオナホづくりの裏側と、彼女の今とこれからについて伺いました。

前編はこちらから

”日本一買いにくい”ビジネス書『女子大生、オナホを売る。』は、なぜバズった? 著者リコピンが”マーケ的”な視点から分析

 「見まちがえたかな?」 書店やSNSで本書のタイトルを見かけ、目を疑った人は多いのではないだろうか。 『女子大生、オナホを…

100人の男性に、オナホについて聞きまくる

オナホを作ってみたら? という師匠の言葉ではじめたのがオナホ販売のきっかけだったと話すリコピン氏。しかし大学生だった彼女が実際に行動に移すということはなかなかできるものではない。

――インターンでWebマーケを手掛けていた頃、「新規事業を起ち上げたい!」とオナホを商材に選びます。著書にありましたが「下ネタすら苦手な女性」であるリコピンさんが、オナホを選ぶのは大変な決断だったと思うのですが、実のところどうでした? リコピン:いやあ、そうでもなくって。結構すぐ「やってみよう」と決めました。

 本にも書きましたが、そもそもはマーケティングを教わったインターン先の師匠に「新規事業を起ち上げたい? オナホでもつくってみたら?」と軽く提案されたのがきっかけだったんですね。

 少しリサーチすると、どうやらオナホは「なんとなく」で選んでいる人が多いことがわかった。周囲の男性に聞いてみても「Amazonで適当に」「好みの女性イラストが描かれたパッケージで選んでいる」との声が圧倒的でした。そのくせ、強い「コンセプト」を打ち出して差別化をはかっているオナホブランドが見当たらなかった。「これワンチャンありそうだな」と感じたのが、まず大きな理由です。

 もっとも、それ以前に、幼稚園の戦いゴッコで武器商人をしたら注目を集めたように「人と違うことこそ飛び込んでやってみよう」と思っていたところもありましたね。

――「コンセプトの強い商品があれば差別化につながる」との確信は、Webマーケを通じて実感していたものですか?

リコピン:はい。インターン先ではコンテンツマーケティングを手掛けていて、クライアントからいただいたリリースをもとに、記事広告をつくるライティングの仕事をしていたんですね。

 いろんな商品の記事を山ほど書いたのですが、モノが何であれ「コンセプトが明快でしっかりとユーザーの悩み事をとらえている」商品はしっかり売れたんです。

 極端な話、そういう商品は私が雑な記事広告をつくっても、売れる。ユーザーに刺さるコンセプトさえあれば、それは伝わる。逆にいうと、いくらコピーや広告でよく見せようとしても、コンセプトがなかったり、あやふやだったりすると、やっぱりユーザーのみなさんに刺さらないし売れなかったんですよ。

 そういった経験から、オナホを手掛けるときも、しっかりとユーザーの悩み事を解決するコンセプトづくりに成功のカギがあると信じていました。そのコンセプトさえしっかりつくれれば、ちゃんと結果につながると思っていました。

 だからこそ、想定ユーザーのインサイトを発掘するため、彼らへのインタビューを繰り返したんです。

――にしても、インタビューはすさまじいですよね。友人はもちろん、マッチングアプリで知り合った男性や、秋葉原のアダルトグッズ店前で路上インタビューしたりと100人以上に「オナホ」について聞いている。頭が下がります。

リコピン:いやいや、路上インタビューなんかは、人によってはストレスを感じるのかもしれませんが、私はむしろ楽しみながらやっていました。

 ただ、そこも意外性が効いた気もします。「オナホ? え、女がつくるの?」と興味をもってインタビューに答えてもらえた気がします。男性がアダルトグッズについて聞いてくるのはあまりに普通すぎてスルーするか、「怪しい」が先に立つんじゃないですか。

――むしろ身近な男性の友人にインタビューされているのがすごいなと。私なら、顔見知りの女性にオナホについて答えることこそハードルが高く感じます。

リコピン:ああ。そこは、私と同じく少し変わった友人が多いので、みんなおもしろがって答えてくれたところはあるかもしれません。

 ただ、2人くらいは、オナホのアンケートをお願いしたのをきっかけに、縁を切られました。ただ母数からいうと、2人だけで済んだのでまだよかったかなと(笑)。

――(笑)。本書では、男友だちがオナホを使っている最中に電話でリコピンさんがインタビューして、実況してもらうお話も出てきます。

リコピン:ええ。さすがにその最中は「これ、何の時間だろう」と思いました(笑)。しかし、彼のおかげで手に取るように男性のニーズがわかりました。

 またそもそもあれは、「終わったら説明するから、俺から電話かけるね」と言われていたのに、電話がかかってこないから、こちらからかけ直したんです。そうしたら、まだ使用中で、「じゃあ、使いながら説明するわ」とインタビューに答えてくれたんです。

 いずれにしても、「人と違う」を実践しながらインサイトを探った実感はありましたね。

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