『女子大生、オナホを売る。』著者に聞く”販売の極意”「執拗なユーザーインタビューを繰り返したら、友だち2人なくしました」

リコピン
インサイトを徹底的に深掘りするために、リコピン氏自身が臆せず街頭インタビューまでも行ったという。そのようなバイタリティは、どんな仕事においても成功を勝ち取るためには必要なことだといえるだろう。

「育てるオナホ」のヒントになった、あの商品

――そしてたどり着いたコンセプトが「育てるオナホ」でした。

  リコピン:インタビューによって「購入前は自分にぴったりのオナホがわからない」「繰り返し洗っているうちにすぐ壊れてしまうのがもったいない」といった声が圧倒的に多いとわかった。声を聞きまくってユーザーのインサイトにたどり着いたからこそ生まれたコンセプトでした。

――ただ実際、インタビューでその解決されていない課題は見えたものの、“育てる”というコンセプトに転換させたのはすばらしいし、苦労された気がするのですが。

リコピン:いえ「育てる」の言葉は、インタビューを続けていく中で、けっこうすぐに浮かびましたね。

 しいてひとつヒントになったものがあるとしたら当時、友だちがハマっていたアクアリウムかなあ。

――アクアリウムって、魚と水草を配した水槽をジオラマのようにつくりあげるアレですか?

リコピン:はい。あのアクアリウムに凝っている友人がいて、その人が「単純に美しいとか完成度が高いってよりも、自分で手を動かしてカスタマイズするか、オーダーメイドで職人さんにつくってもらったりして“自分好み”にするのが楽しいんだよね」と言っていたんです。「ただあるものを買うんじゃなくて、育てるのがいい」と。オナホでも「育てる」ってのは割りとアリだなと。

――まさにいろんなところにアンテナを張っておくと、意外な場所で活きることがあるわけですね。

リコピン:それはめちゃくちゃ思いますね。

 たとえば、「育てるオナホ」のキャッチコピーには「使うほどに気持ちよくなる!?」とつけました。商品のターゲットとなる顧客に「使うほど自分にあった気持ちよさになる=育てるオナホ」であるということがしっかりと伝わるように意識したんです。

 これは私がDTM音源をつくって販売してきたノウハウが活きましたね。何か音楽だとカッコいい横文字のタイトルとコピーで見せたくなるのですが、ユーザーの方々は全然そんなもの求めていなくって。もっと「ドライブ中にぴったり」とか「ひとりでまったりする時間に」みたいに、変にカッコつけず、聴いているシーンが浮かぶものにしたほうが全然クリックされたんですよ。そのときのノウハウを少し活かしました。

――なるほど。そして開発されたオナホはAmazonでランキング4位になる売れ筋商品に。また、こうしてその顛末が一冊の本にまでなりました。

リコピン:私自身、驚いています。

 書籍に関しては、いろんな起業家の方々にお会いする中で、『金儲けのレシピ』の著者でもある事業家botさんに声をかけてもらったことがきっかけで出版に至りました。

 事業家botさんとの出会いは彼が当時主催していた起業家の勉強会に参加させていただいたのが始まりだったんですが、その勉強会は参加者がほとんど東大生しかいなくて、「明大生だけど大丈夫かな」と不安でした。けれど、「オナホつくっています!」と伝えたら、すぐ興味を持ってもらえて。

 やっぱり「女子大生×オナホ」の意外性は、メリットばかりだなとここでも感じましたね。

――あえて「女子大生×オナホ」の意外性でデメリットを感じたことはありましたか?

リコピン:たまに「反社のフロント企業」だと思われることですね。「裏にヤ◯ザがいるに違いない」と。いません(笑)。

――ちなみに今はオナホ事業は手離れして、マーケッターとして独立されている。同時に0歳のお子さんを持つ母親でもあるんですよね。なにか考え方が変わったりしました?

リコピン:変わりましたね。子供が生まれる前は、自分の生きている時間はすべて仕事に全振りできる生活だったので、オンオフ関係なくメリハリもなく過ごしていた面があった。

 けれど、今は保育園にあずけている時間だけ、集中して仕事するようにしています。一緒にいる時間は大切にしたいので、なるべくPCなどを開きたくない。結果として、時間の使い方にメリハリもできたし、制約があるからこそクリエイティブに仕事できている気がします。

 どこかフィールドワークのように、自分の子育てを楽しみ、味わっているところもあるのかもしれません。

――今後はどのようなビジョンをお持ちですか?

リコピン:オナホ以外にも、世の中には、モノがいいのに「コンセプトが薄いせいで売れないモノ」って無限にあると思うんです。

 友人の農家が、とてもすばらしいリンゴをつくっているのですが、「売れない」といつも嘆いている。食べてみると本当に美味しいんですけど、やはり明確な刺さるコンセプトがないと、これだけモノが溢れた中では埋もれてしまうんですよね。

 同じようなことが農産物はもちろん、伝統工芸品とか他にも本当にたくさんありますよね。これからは、素晴らしいのに埋もれてしまっている商品のコンセプトづくりのお手伝いができればうれしいですね。オナホでうまくいったノウハウを、リンゴとか全く違う領域のモノに活かせたら、また楽しそうじゃないですか(笑)。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる